NTT東日本・西日本による固定電話網の刷新に伴い、電話回線をクラウドPBXに切り替える企業が増えています。しかしその際に「今ある電話機や電話番号は続けて利用できるのだろうか?」などの疑問を持つ方もいらっしゃいます。
電話回線が変わっても、コミュニケーション手段としての電話の役割は変わりません。それゆえにクラウドPBXに移行した後に想定外の事態にならないように基礎知識を押さえ、疑問点を解決しておくことが重要です。
そこで今回は、クラウドPBXと固定電話の違いと基礎知識を紹介します。クラウドPBXで使用できる端末機器や、電話番号の扱いにも触れていますのでぜひ参考にしてください。
スマートフォンで会社の電話対応をしたい方におすすめなクラウド電話として、「カイクラフォン」があります。機器の設置なしで利用できるため始めやすく、自動録音機能や文字起こし機能で聞き取りにくい通話も漏れなく記録できます。
電話の聞き逃しやクレーム対策に役立つクラウドPBXの詳細を知りたい方は、以下よりご確認ください。
クラウドPBXと固定電話の違い4つ
クラウドPBXと固定電話の違いに触れる前に、PBXについて解説します。PBX(Private Branch eXchange)とは、会社で使用する内線・外線電話を振り分ける構内交換機です。
そのクラウド版であるクラウドPBXは、社内に構内交換機を設置せずに電話ができる仕組みで、インターネット回線を使用しています。また社内にサーバーを構築し、ソフトをインストールして電話(ビジネスフォン)を使用する「IP-PBX」もあります。
一方で固定電話とは、固定電話回線を使用した従来の通話サービスのことです。クラウドPBXと固定電話の違いを以下の順で解説します。
- 回線と仕組み
- 電話を使用する場所
- 使用できる電話番号
- 導入にかかる期間と費用、電話料金
ぜひ参考にしてください。
1.回線と仕組み
クラウドPBXと固定電話は、使用する回線と仕組みに大きな違いがあります。
クラウドPBXはインターネット回線を使用し、クラウド上に電話交換機をおく仕組みです。この場合のインターネット回線とは光ファイバーの光回線や、モバイル回線、ケーブルテレビのネットワークを利用した回線を指します。
対して固定電話は、金属製の電話回線(別名「メタル回線」)を使用します。NTT東日本・西日本の管轄局内にある電話交換機と利用者宅を物理的につなげることで、電話が利用できる仕組みです。
なお2024年、NTT東日本・西日本では、管轄局内の設備をIP網に移行する工事が完了しました。既存の電話回線が使用できなくなったわけではありませんが、今後はますますインターネット回線が主流になるでしょう。
2.電話を使用する場所
クラウドPBXと従来の固定電話の2つ目の違いは、電話機が使える場所にもあります。
クラウドPBXの場合、インターネットが使える環境であればどこでも通話できるため、在宅・テレワークにも対応しています。スマートフォンを電話端末として使用できれば、外出中、移動中でも会社の電話対応が可能です。
一方固定電話は、電話回線がひかれた場所でのみ通話できます。NTT東日本・西日本の管轄局内ではIP網でも、利用者宅に引かれた電話回線は従来のままです。
電話サービスの契約内容も変わらず、決められた場所でのみ通話できます。
3.使用できる電話番号
3つ目の違いは、使用できる電話番号です。クラウドPBXの電話は、「03」や「048」などの市外局番から始まる電話番号(0ABJ番号)のほか、050から始まる番号が利用できます。
対して固定電話は、会社の所在地にあわせて0ABJ番号が割り振られます。そのため、移転などで電話番号の変更を余儀なくされることがあります。この他、着信課金番号であるフリーダイヤル(0120、0800番号)を利用可能です。
ちなみにクラウドPBXも、固定電話と同じように着信課金番号を利用できるサービスがあります。フリーダイヤルの利用を検討している場合は、サービス事業者に詳細を確認すると確実です。
4.導入にかかる期間と費用、電話料金
4つ目の違いは、導入にかかる期間と費用、電話料金です。それぞれ料金はかかりますが、特徴があります。クラウドPBXと固定電話のコストを簡単にまとめました。
項目 | クラウドPBX | 固定電話 |
---|---|---|
開通までの期間 | 数日~ | 1週間~
※場所や時期による |
初期費用 | 無料~
※サービス事業者による |
【加入電話の場合】
契約料 880円/施設設置負担金 39,600円/工事費(必要に応じて) |
月額基本料金 | ※サービス事業者・回線規模による | 【事務用の場合】
2,640円~ |
通話料金 | ※サービス事業者による
拠点間通話・内線は無料 |
固定電話間は全国一律9.35円/3分 |
なお固定電話は、これらのコストのほかにユニバーサルサービス料と電話リレーサービス料が必要です。また、施設設置負担金がゼロになる「ライトプラン」もありますが、工事費や月の基本料金が割高になります。
一方クラウドPBXは物理的な設備投資が少なく、比較的初期費用を抑えやすい傾向です。導入後は、拠点間・内線での通話が無料になることもあります。
クラウドPBXにはコストのほかにもメリット・デメリットがあります。以下の記事も参考に、情報収集をしてみてください。

固定電話機も可能!クラウドPBXの電話端末は5種類
クラウドPBXと固定電話の違いをみてきましたが、クラウドPBXは電話の場所とコスト面で固定電話よりも柔軟に選べる傾向があります。それでは通話に使用する電話端末はどうなのでしょうか?
本章ではクラウドPBXで通話できる端末を紹介します。
- スマートフォン(Android・iPhone)
- パソコン
- タブレット
- IP電話機(SIPフォン)
これらのなかには使用環境が限定的な機器もあります。詳しく解説しますので、ぜひご参考にしてください。
1.スマートフォン(Android・iPhone)
まず、手軽に導入できるクラウドPBXの端末として挙げられるのが、AndroidやiPhoneのスマートフォンです。スマートフォンに専用アプリをインストールするだけで、内線や外線の電話対応ができるようになります。
個人所有のスマートフォンを会社用に転用できるため、予算を抑えたい企業の選択肢としても有効です。社用の端末を別途人数分用意せずに済むからです。
ただし、社員が昔ながらの携帯電話(ガラケー)しか持っていない場合は、クラウドPBXを使用するためのアプリをインストールできないため、端末の用意が必要です。
またスマートフォンも、アプリが正常に作動する端末でなければなりません。
2.パソコン
次にパソコンがあります。パソコンもアプリをインストールすることで、クラウドPBXで電話対応ができるようになります。
持ち歩きしやすいノートブックを利用すれば、社外でもインターネットにつないで電話を利用可能です。さらに顧客情報の連携機能があるクラウドPBXの場合、パソコンの画面で電話相手の情報を確認しながら通話することもできます。
また、パソコンは調べものをしながら通話も可能で、電話機能一体型のスマートフォンよりも通話中に操作しやすいのがメリットです。
3.タブレット
続いて、クラウドPBXの端末としてタブレットを活用することも可能です。タブレットもスマートフォンやパソコン同様に専用アプリのインストールを経て、クラウドPBXを利用できます。
タブレットのメリットは、スマートフォンよりも画面が大きく見やすいので、必要に応じてファイルの送信などの操作がしやすいことです。また、パソコンよりもコンパクトなため携帯しやすく、外出先やテレワーク時の電話対応にも適しています。
ほかにも、タブレットを無人受付用に企業のエントランスにおく活用法も有効です。訪問者は、エントランスでタブレットを使って社内に電話をかけることができます。
4.IP電話機(SIPフォン)
ほかにクラウドPBXの端末として、IP電話機(SIPフォン)もあります。IP電話機とは、受話器の形状をしたIP電話用の有線の端末です。
これまで紹介したスマートフォン、パソコン、タブレットは、社内に電話インフラがない場合やテレワークなどで電話対応を進めたい場合に適した機器でした。
一方で、社内に有線LANがある場合や、もともとIP電話をSIPフォン(ビジネスフォン)で使用していた場合は、クラウドPBXに移行しても有線のまま利用できます。
職場内での電話業務が多い企業や、パソコンでの通話に不慣れな社員が多い企業では、据え置きのSIPフォンが使いやすい場合もあるでしょう。
5.設定済みの固定電話機
クラウドPBX対応の端末として、既存の固定電話機を使用する選択肢もあります。電話システムの切り替えに伴い、既存の固定電話機も総入れ替えするのは抵抗がある方もいるでしょう。その場合の選択肢として有効です。
ただし、アナログの固定電話機はそのままではクラウド電話を使用できません。クラウドPBXでアナログの固定電話機をつなぐには、社内に「VoIPゲートウェイ(Voice over Internet Protocol)」という異なる電話網をつなぐ中継設備が必要になります。
VoIPゲートウェイ機器は数万円からあり、使用する固定電話機の台数によって変動します。そこで、パソコンなどの端末で電話対応する場合と費用の比較をおこない、予算に見合った設備投資をすることが先決です。
クラウドPBXを導入する際に押さえるべきこと4つ
前章では、クラウドPBXで使用できる端末を紹介してきましたが、重要なのは自社にあったサービスを導入することです。
ここでは、システム導入後に後悔しないための事前知識を紹介します。
- 通信環境に音質が影響を受ける
- かけられない電話番号がある
- 複合機のFAX機能が利用できない
- 固定電話番号を利用できないサービスもある
それぞれ詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
1.通信環境に音質が影響を受ける
1つ目は、クラウドPBXは通信環境に通話音質が影響を受けることです。インターネットの接続環境は年々向上していますが、クラウドPBXがインターネット回線に依存する仕組みであることに変わりはありません。
そのためインターネットの通信環境によっては雑音が入ったり、音声が途切れたり、遅れて聞こえたりすることがあります。通話音質が悪くなると、双方で音声が聞き取れず、電話対応の難易度も上がってしまいます。
そうならないためにクラウドPBXサービスを選ぶ際、トライアルなどを通して通信環境や音質を事前に確認することが大切です。
2.かけられない電話番号がある
2つ目は、固定電話で架電できる番号でもクラウドPBXではかけられない番号があることです。たとえば、多くのクラウドPBXサービスでは以下の電話番号に非対応です。
▼クラウドPBXで非対応の電話番号例
- 119番:消防署・救急車
- 110番:警察署
- 118番:海上保安庁
- 104番:番号案内
- 117番:時報
これらの番号へ連絡をする際には、携帯電話や固定電話からかけなければなりません。緊急時に架電できないことを知ると焦ってしまう可能性があるため、事前に押さえておきましょう。
3.複合機のFAX機能が利用できない
3つ目は、クラウドPBXは複合機のFAX機能が使えないことです。理由は複合機のFAX機能はアナログ回線を使用しているためで、電話をインターネット回線のクラウドPBXに完全に移行すると使えなくなってしまいます。
FAXを引き続き利用するには、使用中の回線を残しておくか、変換アダプターを使用する方法があります。ほか、別途インターネットFAXサービスを契約して利用する方法もあるので、社内環境にあわせて検討してみてください。
以下の記事ではクラウドPBXでFAXを使う場合の方法を解説していますので、あわせてご一読ください。

4.固定電話番号を利用できないサービスもある
4つ目は、地域によって割り振られた固定電話番号(0ABJ番号)が使用できないクラウドPBXもあることです。また、既存の固定電話番号を引き継げない場合もあります。
市外局番が変わるような移転をしたわけではないのに、固定電話番号を引き継げないとすると手間が生じます。関係各社に変更後の電話番号を連絡しなければならないからです。
ただし、多くのクラウドPBXサービスでは、同じ固定電話番号の継続利用が可能になりつつあります。
クラウドPBXの注意点はほかにもあります。クラウドPBXのデメリットをより深く押さえたい方は、以下の記事もあわせてご一読ください。

固定電話番号をそのまま活用できる「カイクラフォン」
スマートフォンを内線化するだけではなく、会社の代表電話番号を継続利用したい方に適したクラウド電話が、カイクラフォンです。
これまではクラウドPBXに切り替えた際に、既存の固定電話番号を継続利用できない場合がありました。しかし、2025年1月より双方向番号ポータビリティ制度が始まり、カイクラフォンは、東京や大阪などの都市圏で固定電話番号の引き継ぎが可能になりました。
加えてカイクラフォンには以下の機能があります。
- 通話の自動録音
- 文字起こし
- 顧客情報表示
- 発着信履歴の表示
これらの機能を活用することで、在宅・テレワーク時に急ぎの電話がきても、顧客情報とそれまでのやりとり履歴を迅速に確認可能です。
加えて通話記録を確実に残せるため電話での聞き逃しを防止し、伝達ミスなどを防ぎ、適切な顧客対応を目指せます。
使ってみたいと思った方や、カイクラフォンの機能に興味をお持ちの方は、以下より詳細をご確認ください。
まとめ:クラウドPBXで固定電話を有効活用しよう!
クラウドPBXと固定電話の違いや、システム導入の際のポイントをみてきました。クラウドPBXは、導入後も既存の固定電話番号を利用することが可能です。
ただし、システム導入後も固定電話機を引き続き利用する場合は、異なる電話網をつなぐ機器を設置する必要があります。既存の電話システムと予算をふまえ、現実的な選択をするとよいでしょう。
カイクラフォンは、別途機器の設置不要で利用できるサービスです。また社員所有の私用スマートフォンを、アプリを使用して社用携帯として活用することも可能です。
カイクラフォンの魅力を詳しく知りたい方は、ぜひ以下よりご確認ください。