カスタマーハラスメントの事例5選!適切な対策方法も紹介

多くの企業が頭を悩ませているカスタマーハラスメント問題。2024年6月、東京都が全国初のカスタマーハラスメント防止条例の制定に向けて本格的に動き出しました。

こうした状況下で、個々の企業では自社の従業員を守るためにも、カスタマーハラスメント対策に本腰を入れて取り組む必要があります。

そこで、本記事では、カスタマーハラスメントの実態をより理解するために、5つの具体的な事例と企業が今すぐ取り組むべき対策をまとめています。

大きな被害を被らないためにも、事例から学び適切な対策を講じましょう。

カスタマーハラスメントとクレームには、共通する点が多くあります。「事例よりも今すぐに電話業務でのクレーム対処法が知りたい」場合には、カイクラが作成した資料「クレーム対応ノウハウ」がおすすめです。

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目次

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?

カスタマーハラスメントとは、顧客(カスタマー)が従業員に対して行う、理不尽な要求や暴言、嫌がらせ(ハラスメント)行為です。

近年、サービス業を中心に深刻な問題となっており、企業や従業員に大きな影響を与えています。

2020年の厚生労働省の調査では、過去3年間のハラスメント相談のうち、3番目に多かったのがカスタマーハラスメント(19.5%)でした。

この結果からも、職場におけるカスタマーハラスメントの深刻さと、早急な対策の必要性を浮き彫りにしています。

相談の具体的な内容としては、「長時間の拘束や同じ内容を繰り返すクレーム」(52%)や「名誉毀損・侮辱・ひどい暴言」(46.9%)が多い傾向にあります。

カスタマーハラスメントの概要について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご一読ください。

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カスタマーハラスメントとクレームの違い

カスタマーハラスメントとクレームは、一見似ている言葉にみえて、実際には大きな違いがあります。

クレームは、商品・サービスに対する正当な不満や改善要求であり、適切に対応することで顧客満足度の向上や業務改善につながる可能性があります。

一方、カスタマーハラスメントは理不尽な要求や暴言など、従業員に精神的ストレスを感じさせ、業務にも支障が出るほどのものです。

▼クレーム

  • 購入した商品が不良品だったから返金・交換して欲しい
  • 以前よりも使いにくくなったサービスを改善して欲しい

▼カスタマーハラスメント

  • 「購入した商品が不良品だったから土下座して謝れ」と強要する
  • 「サービス改善してくれないなら担当者の名前をSNSで晒してやる」と脅迫する

双方の違いを理解することで、従業員はクレームとカスタマーハラスメントを適切に区別し、それぞれに適した対応が取れるようになります。

カスタマーハラスメントとクレームの違いをさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご一読ください。

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カスタマーハラスメントの具体的な5つの事例

カスタマーハラスメントは年々増加傾向にあり、悪質なクレーマーが絶えません。企業側が適切な対策をするためにも、まずは実際にどのような内容があるのかを知っておく必要があります。

ここでは、具体的なカスタマーハラスメントの事例を5つ紹介します。

  1. 長時間拘束される
  2. 罵詈雑言を浴びせられる
  3. 過剰な謝罪要求をされる
  4. 脅迫行為をしてくる
  5. SNSを使った嫌がらせをする

では、ひとつずつみていきましょう。

【事例1】長時間拘束される

お客様相談センターなどのコールセンターでとくに多いのが、長時間拘束です。業務に支障が出るほど話し続けられると、対応している従業員は精神的に疲弊してしまいます。

あるメーカーのお客様相談窓口では、顧客が商品の説明を何度も求めたり不満を延々と話し続けたりする行為がありました。

なかには、ストレスの捌け口として使われ、「3時間以上会話を引き延ばして電話を切らない」という悪質なケースもあります。

長時間拘束されると、社員に大きな負担をかけるだけではなく、他の顧客への対応にも支障をきたします。

「通話が30分を超える場合は、上司がサポートにつき、必要に応じて電話を代わる」など、通話が長期化したときの対処法を決めておくのがおすすめです。

【事例2】罵詈雑言を浴びせられる

接客業では、顧客から罵詈雑言を浴びせられるケースが珍しくありません。

暴言内容の例としては、以下の通りです。

▼具体例

  • レストランで接客中に「女のくせに」「バカなお前にこの仕事する資格はない」などと、スタッフへ大声で怒鳴りつける
  • 「俺は客だぞ、なめやがって」「お客様は神様だろう」「お金を払っているんだから、いうことを聞くのは当然だ」などの威圧的な態度を取る

このような暴言や威圧的な態度は、接客するスタッフに深刻なストレスを与えます。また放置すれば、接客するスタッフの心身の不調を引き起こすことになりかねません。

【事例3】過剰な謝罪要求をされる

理不尽な謝罪要求も、深刻なカスタマーハラスメントのひとつです。ここでは、あるアパレルチェーン店で起きた事件を紹介します。

▼具体例

  • スタッフの接客などに難癖をつけて「サービスが悪い分、宿泊代をタダにしろ」「部屋をアップグレードしろ」などと無理な要求をする
  • 要求に応じないと「お前の名前覚えたからな、ネットに晒すぞ」「口コミの評価下げてやる」と脅迫する

この行為は明らかに犯罪であり、後に強要罪で逮捕されました。

過剰な謝罪要求は、従業員の尊厳を傷つけることに加え、SNSでの拡散によって企業イメージにも大きなダメージを与える可能性があります。

【事例4】脅迫行為をしてくる

顧客からの脅迫行為は、従業員に不安や恐怖を与えます。複数の事例をみてみましょう。

ここでは、ホテル業界での例を紹介します。

▼具体例

  • スタッフの接客などに難癖をつけて「サービスが悪い分、宿泊代をタダにしろ」「部屋をアップグレードしろ」などと無理な要求をする
  • 要求に応じないと「お前の名前覚えたからな、ネットに晒すぞ」「口コミの評価下げてやる」と脅迫する

また、カスタマーハラスメントは一般消費者だけではなく、企業間の取引でも起こります。

▼具体例

  • 長年の取引先から突然、無謀な量の修正依頼をし、「明日までに全て終わらせろ、できなければお前の会社に火をつけるぞ」と強い言葉で脅してくる
  • 「対応次第では、他社に切り替えを検討する」と、契約打ち切りをちらつかせて無理な要求を通してくる

これらの行為は全て脅迫に該当します。脅迫行為に遭遇した場合、毅然とした態度で対応し、必要に応じて警察に通報することも重要です。

【事例5】SNSを使った嫌がらせをする

SNSを使ったカスタマーハラスメントには、「外食テロ」と呼ばれる企業の信頼を損なわせるものがあります。

具体的には、回転寿司チェーンや牛丼チェーンなどの店内で迷惑行為を行い、SNS上でアップするものです。内容は、共用の調味料や薬味を直箸で食べるなどの不衛生なものが中心でした。

このような迷惑行為は、SNSで拡散され炎上したことで、企業のイメージダウンへとつながりました。なかには株価が大幅に下落するなど多大な影響が出ているものもあります。

また、役所の窓口担当者やタクシーの運転手に対し、難癖をつけて「実名をネットに晒してやる」と脅迫するハラスメントも多発しています。

以上のようにSNSを使った嫌がらせは、従業員のプライバシーを侵害するだけではなく、企業の評判を一気に落とし、業績に大きな打撃を与える可能性があります。

企業がカスタマーハラスメント対策をすべき理由

増え続けるカスタマーハラスメントに対し、企業が対策に取り組むべき主な理由は以下の2つです。

  1. 企業の業績悪化
  2. 職場環境の向上

では、それぞれみていきましょう。

【理由1】企業の業績悪化

カスタマーハラスメントは、直接的・間接的に企業の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

直接的な影響とは、カスタマーハラスメントの対応に追われて他の顧客を待たせてしまうなど、本来の業務に支障が出てしまうことです。

間接的な影響では、企業イメージの低下が考えられます。インターネット上で不当な口コミや評価が拡散されると、たとえ事実でなかったとしてもネガティブなイメージを持たれてしまい、社会的信用の低下へとつながりかねません。

これらの理由から、カスタマーハラスメントを未然に防ぐ対策を講じることが、企業の業績悪化を防ぐうえで重要です。

【理由2】職場環境の向上

カスタマーハラスメント対策は、従業員の働きやすさを大きく左右します。

企業として適切な対策を行い従業員に安心感を与えられれば、従業員のモチベーション低下やメンタル不調による休職・退職へつながるリスクを軽減できるからです。

また、企業には「安全配慮義務」があり、従業員の生命・身体の安全を確保し、適切な労働環境を提供する義務があることをご存知でしょうか。

もし、従業員がカスタマーハラスメントを受けているにもかかわらず、企業が何も対応しなかった場合、安全配慮義務違反として従業員から損害賠償の請求される可能性もあります。

参考:e-GOV法令検索│労働契約法第五条

以上の理由から、企業はカスタマーハラスメント対策を重要な課題として捉え、積極的に取り組む必要があります。

では、具体的なカスタマーハラスメント対策とはどのようなものでしょうか。次の章で詳しく解説します。

企業が取り組むべきカスタマーハラスメントへの対策5つ

カスタマーハラスメント対応策として企業が取り組むべきポイントを5つにまとめます。

  1. カスタマーハラスメントを許さないと明確化する
  2. 相談窓口を設置する
  3. 対応マニュアルを作成する
  4. 従業員の研修を実施する
  5. 悪質なものは弁護士または警察へ相談する

なかでもマニュアル作成と研修は、従業員の適切な対応力を育成するうえで重要なポイントです。それでは、対策をひとつずつ紹介します。

【対策1】カスタマーハラスメントを許さないと明確化する

最も重要なことは、企業として「カスタマーハラスメントを許さない」というメッセージを明確に従業員や顧客へと伝えることです。

そのためにまずは、企業としての基本方針や取り組み姿勢をまとめましょう。基本方針を明確にすることで、現場の従業員が毅然とした態度で接客できるようになります。

▼基本方針の例

カスタマーハラスメントの定義

  • 顧客からのクレームや言動のうち、社会通念上不相当なものや就業環境が害されるもの、業務に支障がきたすものを指す

カスタマーハラスメントは自社にとって重大な問題である

  • 迷惑行為はたとえ顧客であっても許さない
  • 不当な要求には組織として毅然とした対応をする

カスタマーハラスメントが起きた場合は、放置せずに従業員を守る

  • 従業員の人権を尊重する
  • カスタマーハラスメントを受けた従業員は相談窓口へ相談して欲しい

基本方針は、ポスターにして店内に貼ったりWebサイトに掲載したりして顧客へ周知することも有効です。

【対策2】相談窓口を設置する

基本方針を整えたら、カスタマーハラスメントを受けた従業員がすぐに相談できるよう体制を整えましょう。

まずは、カスタマーハラスメントを受けた従業員が相談できるよう相談対応者を決めます。さらに専用の相談窓口を設置し、従業員に広く周知しましょう。

具体的な役割は、以下の通りです。

▼カスタマーハラスメント相談フロー

  • 従業員がカスタマーハラスメントだと判断したら、上司や現場監督者などの相談対応者に相談する
  • 相談対応者は相談を受けたら、内容を取りまとめて相談窓口に報告する

▼カスタマーハラスメント相談窓口

  • 人事労務部、カスタマーサービス部、法務部が中心となり対策チームを設ける
  • 基本方針や研修を取りまとめて周知・実施する
  • 該当するか否かを正確な事実確認をしたうえで、確かな証拠に基づいて判断し対応を決める
  • 場合によっては弁護士や臨床心理士、警察などと連携する

相談の内容や状況に応じ、適切に対応できるようにしましょう。

【対策3】対応マニュアルを作成する

従業員が迷惑行為を受けた際に、適切な対処をするためのマニュアルを作成します。

マニュアル作りには、厚生労働省が発表している「カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル」が役立ちます。

ただし、対応方針は業種や規模、顧客との関係などによっても異なります。あらかじめ、自社に合ったパターンを想定して対応を準備しておくことが重要です。

従業員が具体的に想像できるよう、自社や業界で実際に起こった迷惑行為の事例と事例ごとの望ましい対応例を記載しましょう。

▼マニュアル例

基本姿勢

  • 顧客への対応は複数名で対応する(一人に解決させようとしない)
  • 証拠を残すため、顧客の言動を録音する
  • 被害を受けた場合の相談先を明記する

長時間拘束の場合

  • 対応できない理由を説明、応じられないことを明確に告げ、一定時間を超える場合は電話を切る、退去を求める
  • 「誠に申し訳ございませんが、私どもではご要望にお答えすることはできかねますので、一度電話を切らせていただきます。」

罵詈雑言の場合

  • 他の従業員を呼ぶ(一人で対応しない)
  • 周囲の迷惑となるため、やめるよう求める、顧客の言動を録音する
  • 「他のお客様の迷惑となりますので、ご遠慮いただきますでしょうか。」
  • 「これ以上そのようなことをされる場合は、警察を呼びます。」

過剰な謝罪要求の場合

  • 要求には応じない、顧客の言動を記録する
  • 「不快な思いをさせて申し訳ございません。上司にも報告する必要がありますし、重要なことですので、記録させていただきます。」

脅迫行為

  • 顧客への対応は複数名で対応し安全確保を優先する
  • 警察への通報も視野に入れる

マニュアルは、必要に応じて多言語で作成し、外国人従業員にも対応できるようにします。

当サイトでも、カスタマーハラスメント対応マニュアルについてより詳しくまとめている記事がありますので、あわせてご一読ください。

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【対策4】従業員の研修を実施する

作成したマニュアルをもとに定期的な研修を実施します。従業員同士共通した意識でいれば、いざカスタマーハラスメント被害を受けても一貫した態度で対応できるようになります。

研修内容の一例は、次の通りです。

▼研修の内容例

  • カスタマーハラスメントに対する基本方針と定義
  • 過去事例を共有する
  • 迷惑行為パターン別の対応方法(謝罪、話の聞き方など)
  • 顧客への接し方のポイント
  • 被害があった場合のフロー
  • 記録の方法

研修は、アルバイトも含めてなるべく全従業員が参加できるように定期的に実施しましょう。全従業員がカスタマーハラスメントに対処できるスキルを身につけられるようにすることが重要だからです。

カスタマーハラスメントの研修について詳しくは、以下の記事をご一読ください。

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【対策5】悪質なものは弁護士または警察へ相談する

正確な事実確認のうえ、自社だけでの対応が難しいと判断した場合には、弁護士への相談や警察への通報を検討します。

たとえば、以下のような場合です。

  • 従業員に危険が迫っている
  • 何度も繰り返し起こり業務に支障をきたしている など

なお、警察へ相談する際、ボイスレコーダーや書面などの確実な記録があれば証拠として提示できます。

また、従業員への配慮も必要です。メンタルヘルスに不調がある場合には、産業医への依頼や専門の医療機関への受診を促すなどのアフターケアを行います。

さらに、再発防止のための取り組みも行いましょう。カスタマーハラスメント再発防止について詳しくは、以下の記事をご一読ください。

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電話対応のクレーム削減に成功した事例

ここで、電話業務効率化ツール「カイクラ」の活用により、顧客からのお叱り電話を9割以上削減した事例を紹介します。

特別養護老人ホームを複数運営する社会福祉法人三神会様は、日々対応する電話の量が多く、とくに「電話保留時間」や「折り返し電話の対応」に大きな課題がありました。

具体的には、かかってきた電話に対して、担当者が不在で保留のまま長々とお待たせしてしまったり、折り返しのお電話にうまく対応できなかったりしたそうです。

こうした状況を改善するため、「電話対応業務の負担軽減」と「職員の接遇意識向上」を目的に「カイクラ」を導入しました。その結果、保留時間が大幅に削減され、電話対応に関するクレームも激変しました。

さらに、受電前に発信者情報を確認できるようになったため、職員に心理的な余裕が生まれ、意識向上にもつながったとのことです。

参考:社会福祉法人三神会さまの事例

この事例のように電話業務の効率化は、顧客満足度の向上と同時に従業員のストレス軽減にも大きく貢献します。

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まとめ:カスタマーハラスメントの事例を知り早急な対策を

増え続けるカスタマーハラスメントへの対策は、従業員を守るためにも早急に行う必要があります。適切な対応をするためには、まずは事例を知ることが重要です。本記事で紹介した事例をもとに、対応策を検討しましょう。

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この記事を書いた人

カイクラ編集部です。カイクラ.magは、株式会社シンカが運営するオウンドメディアです。 「音声を記録し、会話を企業価値に」をモットーに、「会話」に関する様々なテクノロジーや最新情報、企業の業務効率化や社内コミュニケーションの活性化事例など、すべての企業にとってお役に立てる情報を幅広く発信します。

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