近年増加傾向にある、顧客が理不尽なクレームや言動をすることを指すカスタマーハラスメント。企業にとって、適切に対処できなければ、従業員の離職や企業の評判低下につながる恐れがあります。
カスタマーハラスメントへ適切に対応するためには、社員への研修を実施することが有効です。本記事では、なぜカスタマーハラスメントで研修が大切なのかを紹介し、実際にどのような内容を研修すればいいのか具体例を解説します。
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▲従業員と企業を守るための具体的な対策を解説
カスタマーハラスメント研修とは?目的と背景を解説
カスタマーハラスメント研修は何のためにおこなうのでしょうか。ここでは、目的と背景を、以下の2つに分けて解説します。
- カスタマーハラスメントとは?定義と現状
- なぜ研修が必要なのか?導入の目的と背景
それぞれ詳しくみていきましょう。
カスタマーハラスメントとは?その定義と現状
カスタマーハラスメントとは、従業員が精神的な苦痛を感じる顧客からの迷惑行為を指します。具体的には、以下の行為があります。
- 長時間の拘束
- 暴言、脅迫、人格否定
- 誹謗中傷
厚生労働省が定義しているカスタマーハラスメントは以下の通りです。
顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求に内容の妥当性に照らして、当該要求を実施するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの
カスタマーハラスメントは年々増加傾向にあり、従業員のメンタルヘルスの悪化や離職につながる深刻な問題となっています。多くの企業で対応体制の整備が必要です。
カスタマーハラスメントについては、以下の記事でも詳しく紹介しています。
なぜ研修が必要なのか?導入の目的と背景
カスタマーハラスメント研修の目的は、従業員と組織全体の安全を守ること、そして法的リスクを回避することです。
研修を通して、従業員は適切な対応方法を習得し、感情的な対応や不適切な言動を避けられます。また、企業は厚生労働省が求めるハラスメント対策を講じ、法的リスクを軽減できます。
顧客満足度を維持しながら従業員満足度も向上させるためには、カスタマーハラスメント研修の導入が欠かせません。
カスタマーハラスメント研修でおこなうべき内容7つ
カスタマーハラスメント研修をおこなう際には、以下の7つを盛り込むようにしましょう。
- カスタマーハラスメントの具体例を共有する
- カスタマーハラスメントが与える影響
- カスタマーハラスメントとクレームの違い
- カスタマーハラスメントに対する基本方針
- カスタマーハラスメントに対する社内の体制
- カスタマーハラスメントに対する対応方法
- カスタマーハラスメントを受けた従業員への措置
それぞれおこなうべき内容を詳しく紹介します。
【内容1】カスタマーハラスメントの具体例を共有する
まずは、他社や自社でのカスタマーハラスメントの発生状況を共有しましょう。とくに自社の発生状況は、拠点が複数ある場合にほかの拠点でのカスタマーハラスメント事例を共有することで、他拠点でも起こり得るトラブルを把握できます。
自社での発生状況や発生した事例を知ることで、他人事ではなく身近でも起こる可能性があることを理解でき、研修を自分ごととして受けてもらえます。
【内容2】カスタマーハラスメントが与える影響
カスタマーハラスメントが起きると、自分や周囲にどのような影響があるのか説明します。なんとなく想像はできている従業員も居るかもしれませんが、明確にイメージすることで「なぜ対策しなければいけないか」を深く理解できるためです。
カスタマーハラスメントは、企業・従業員・顧客との3者に対して悪影響があります。
企業への影響 |
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従業員 |
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他の顧客 |
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従業員だけではなく企業や顧客など、いろいろなところに影響が及ぶため対策は必要です。とくに現場では他の顧客へ悪影響を及ぼすため、我慢するのではなく適切に対処することの大切さを伝えましょう。
【内容3】カスタマーハラスメントとクレームの違い
カスタマーハラスメントの定義も認識を深めることが必要です。とくに、クレームとの違いが理解できていないケースもあるためです。
どのような行為がカスタマーハラスメントに該当するのか理解できるように、研修のなかに具体例を盛り込んで説明するようにしましょう。
▼具体例
- 長時間の拘束や同じ内容を繰り返すクレーム
- 名誉棄損・侮辱・ひどい暴言
- 不当な要求など
具体例は、厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」の調査で上位に上がっているものです。とくに同じ内容を繰り返すクレームなどは、カスタマーハラスメントに該当するため適切な対処が必要です。
【内容4】カスタマーハラスメントに対する基本方針
研修のなかでは、企業としての基本方針や姿勢を従業員に理解してもらうことも大切です。企業の姿勢が明確になると、従業員がどのように対応すればよいかわかりやすくなるためです。
たとえば、対面の状態で暴力などがあった場合には「迷わず警察に連絡する」と基本方針が決まっていれば、従業員が上司などへの確認をする時間を待たずに行動を起こせます。早く行動を起こすことが、カスタマーハラスメントの被害を最小限に抑えること、そして従業員の安全を守ることにつながります。
企業としての基本方針や姿勢を共有しておき、従業員が迷わず行動できるようにしておきましょう。
【内容5】カスタマーハラスメントに対する社内の体制
カスタマーハラスメントを受けた従業員が相談できるような体制を作り、従業員に周知徹底します。従業員は相談先がわからないと、実際にカスタマーハラスメントに遭遇しても行動に移せません。
そのため、下記の2点を明確にし、従業員へ共有しましょう。
- 誰に相談すればいいのか?
- どのように相談すればいいのか?
また、相談を受ける役割の人に対しても、どのように対処すればよいのか別途研修を実施する必要があります。
【内容6】カスタマーハラスメントに対する対応方法
実際にカスタマーハラスメントを受けたときに、現場でどのような対応をとればいいのか教育する必要があります。なるべく、具体的な対応方法を示すと従業員も対応しやすくなるため、事例を交えて説明するのがおすすめです。
▼具体例
- こちらに非があることのみ謝罪する(不快な思いをさせてしまったこと「ご不快な思いをおかけして申し訳ございません。」)
- 無茶な要求は丁寧に断る
- 2人以上で対応する
- 録画や録音をとっておく
- 状況に応じて警察や弁護士に相談するなど
このときに、実際に自社で発生したカスタマーハラスメントを例に挙げながら紹介すると、再び起こるかもしれないカスタマーハラスメントの対策になります。
また、一度の研修では対応方法をすべて網羅できないので、マニュアルを作成したり、何度も研修をおこなったりしていくことも必要です。
【内容7】カスタマーハラスメントを受けた従業員への措置
従業員がカスタマーハラスメントの被害にあった場合、企業は配慮した措置をおこなうことを教育しましょう。実際にカスタマーハラスメントにあった場合に、安全の確保ができないと判断したときは、以下の対応が必要です。
- その場を離れる
- 上司に連絡する
まずは、企業としては「安全確保を優先してほしい」ことを伝えます。
また、カスタマーハラスメントの対応をしたことで精神的に異変を感じたときは、企業側からカウンセラーなどの専門家を紹介するようにしてください。
企業として、カスタマーハラスメントにあってしまった従業員に何をするか事前に知らせておくようにしましょう。
事前に知らせておくことで、何かあったときに従業員から申し出しやすい環境ができるからです。
カスタマーハラスメント研修の実施方法4つ
カスタマーハラスメント研修は、従業員向けのものから管理者向けなどさまざまな段階のものを実施する必要があります。ただし、社内のリソースが限られていて十分に研修できない場合もあるのではないでしょうか。
そこで、社内のリソースが限られていても、活用できる方法を紹介します。
- 自社での事例をもとに研修する
- 厚生労働省の動画で学ぶ
- eラーニングなどの動画教材を活用する
- 外部講師を招いて研修する
社内のリソースが足りない場合には、外部の力を借りることも有効です。それぞれの方法を、詳しくみていきましょう。
【実施方法1】自社での事例をもとに研修する
自社で実際に発生したカスタマーハラスメントを事例として研修するのがおすすめです。なぜなら、自社で起きた事例であるため、研修内容にリアリティがあり、従業員の意識向上につながるからです。
今後も現場で起こりうる可能性もあり、自社の課題や改善点を明確化できます。ただし、専門的な知識やノウハウが不足する場合もあるため、専門家の助言などをもとに研修内容を作成するようにしましょう。
ポイントは、実際にどのような対処法をしたのか、その結果どうなったかなどを含めて研修に盛り込むことです。
自社の事例をもとにした研修は、従業員の理解を深め、カスタマーハラスメントへの意識を高める効果が期待できます。
【実施方法2】厚生労働省の動画で学ぶ
厚生労働省では、カスタマーハラスメントに対する研修動画を用意しています。
研修動画は無料で視聴できるので、カスタマーハラスメントとは何かを学んでもらうために動画を活用しましょう。
動画であれば、各従業員が時間のあるときにみられるので、従業員を一斉に集めずに済むこともメリットです。
【実施方法3】eラーニングなどの動画教材を活用する
カスタマーハラスメント用の研修カリキュラムを作るリソースがない場合におすすめの方法が、eラーニングなどの動画教材を使うことです。
カスタマーハラスメント対策の一般的な内容はすでに教材となっているため、社内で作る必要がありません。
一般的な内容はeラーニングで学ぶようにして、基本方針や姿勢など自社にだけ適用される部分のみ研修内容を作成すればよいので負担が少なくなります。
社員全員でまとまった時間をとるのは難しい場合でも、eラーニングなどの動画教材であれば従業員の勤務状況にあわせて学ぶことが可能です。
教材の進捗を個々に管理できるものもあるので、教材の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
【実施方法4】外部講師を招いて研修する
e-ラーニングなどの動画教材では、内容が一般的なものになってしまいます。そのため、教材の内容が自社に合わないかもしれません。
自社ならではの問題が起きやすいカスタマーハラスメントがある場合には、外部講師を招く方法も検討してみましょう。自社の仕事内容や過去のカスタマーハラスメントなどを説明し、自社に沿った内容で研修してもらうと、従業員はより実践的なカスタマーハラスメントへの対処法を学べます。
動画教材よりも費用的には高くなる可能性もありますが、より実際に沿った内容で研修できるメリットがあります。
カスタマーハラスメントの対策と研修は連携させるのがおすすめ
カスタマーハラスメント対策を効果的に進めるためには、研修と他の対策を連携させることが重要です。
具体的には、以下の3つのポイントを意識しましょう。
- マニュアルとポリシーの作成
- 報告システムの構築
- 定期的なフィードバックと改善
それぞれ詳しくみていきましょう。
マニュアルとポリシーの作成
カスタマーハラスメントの具体例や対処方法を記載したマニュアルを作ります。マニュアルを作成しておくと、従業員が必要なときに確認することが可能です。
さらに、カスタマーハラスメントに対する自社のポリシーを明確にして社内外に公開することも大切です。顧客に対する適切な対応を社内外に示すことで、カスタマーハラスメントの発生を抑制する効果が期待できます。
研修では、マニュアルとポリシーの内容を詳しく説明して、従業員に理解を深めてもらいましょう。
報告システムの構築
カスタマーハラスメントが発生した場合、速やかに報告できるシステムを導入しましょう。報告しやすい環境を作ることで、隠蔽や放置を防ぐためです。
具体的には、アンケートフォームのような簡単な入力で報告できるようなフォームを作成し、入力の手間を省き、報告漏れをなくすことが重要です。研修では、報告フォームの入力方法も解説しましょう。
定期的なフィードバックと改善
研修の受講者からアンケートやヒアリングをおこない、研修内容が実際に役立っているかを定期的に調査しましょう。研修内容でわかりにくい箇所や改善点などを把握することで、より効果的な研修内容に改善できるためです。
アンケート結果をもとに、マニュアルや研修内容をアップデートします。必要があれば、外部の専門機関に相談するのもおすすめです。
研修とあわせて実施したいカスタマーハラスメント対策
研修以外にも、カスタマーハラスメント対策として企業はやっておくべきことがあります。以下の3つは、研修とあわせて実施するようにしましょう。
- マニュアルの作成
- 体制の整備
- 事実を確認できる環境の整備
とくに3つめの事実を確認できる環境の整備は、カスタマーハラスメント対策において重要です。録画や録音は確認だけではなく、カスタマーハラスメントの抑止力にもなるからです。
それぞれ詳しくみていきましょう。
【対策1】マニュアルの作成
まずは、カスタマーハラスメントにあったときに、従業員がどのように行動すべきかをマニュアルとしてまとめましょう。研修のタイミングとあわせてマニュアルを作っておくと、研修後に従業員が対処法を振り返られます。
また、研修を受ける前の従業員も、マニュアルを読んでおくことである程度の対応ができるようになります。
以下の記事では、カスタマーハラスメントの対応マニュアルの作成方法を詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
【対策2】体制の整備
従業員が相談しやすい環境や、従業員の安全を確保できる環境を整えることも大切です。
カスタマーハラスメントは従業員にとって負担が大きいため、精神的なサポートができるよう体制を整えておく必要があります。
具体的には、カスタマーハラスメント対策の専門チームを作るのがおすすめです。また、産業医など精神面のサポートができる専門家を紹介できる体制も整えておきましょう。
カスタマーハラスメントを受けた従業員の精神的なサポートは欠かせません。精神的な負担で従業員が離職してしまうことのないように体制を整備しましょう。
【対策3】事実を確認できる環境の整備
事実を確認できる環境の整備も重要です。
カスタマーハラスメントは、クレームと同じように事実確認が必須です。とくに第三者が仲裁する場合、従業員と顧客の言い分が食い違っており、話を進められなくなるケースがあります。
録画や録音などの環境を整備しておけば、後から誰でも事実を確認できます。
たとえば、店舗であれば音声も記録できる録画システムを整備しましょう。電話対応であれば、自動で録音も開始されるシステムがあると安心です。
また、以下の対策はカスタマーハラスメントの抑止としても有効です。
店舗:「防犯カメラ稼働中」の表示をしておく
電話:「この通話はサービス向上のために録音させていただきます」などの音声が流れるようにしておく
たとえば通話を録音できるシステム「カイクラ」は、自動で録音されるためカスタマーハラスメントがあった際に事実を漏れなく記録できます。
また証拠として提出することも可能になるため、カスタマーハラスメント対策をお考えの方は、お気軽に以下よりご確認ください。
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カスタマーハラスメントへの対策をより詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
まとめ:カスタマーハラスメントへの対応は研修で学ぼう!
カスタマーハラスメントに毅然とした態度で対応するためには、定義など基本的なことを研修で学んでおく必要があります。カスタマーハラスメントは、企業や従業員、他の顧客にとっても影響するものなので、しっかりと適切な対応をしなければいけません。
カスタマーハラスメントへの対策として、研修だけではなく、現場で対応しやすい環境の整備も大切です。たとえば、録画や録音は客観的な証拠となる重要な手がかりとなります。とくに電話対応でのカスタマーハラスメントは、録音がなければ客観的な事実をベースに話を進められません。
カイクラでは、カスタマーハラスメント対策のお役立ち資料を用意しています。カスタマーハラスメントの労災認定の事例やクレームとの違いも解説しています。
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