近年、話題にあがることが多くなってきたカスハラ(カスタマーハラスメント)ですが、クレームと同じ文脈で使用されることもあるため「両者の違いはどこにある?」と疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、カスハラとクレームの明確な違いをわかりやすく解説します。カスハラと判断されやすいケースや、企業が取るべき具体的な対策も紹介するので、最後までご一読ください。
「カイクラ」では、カスハラ対策に役立つお役立ち資料を用意しています。カスハラ防止をめぐる世の中の動きから具体的な対応実務まで学べる内容です。無料でダウンロードできますので、詳細を知りたい方は下記からご確認ください。
\社労士が監修!/
カスハラ対策の資料をダウンロード
▲従業員と企業を守るための具体的な対策を解説
カスハラとクレームの違いを理解しておくべき理由
カスハラとクレームを正しく区別できないまま対応をしてしまうと、企業にも従業員にも影響を与える可能性があります。ここでは、なぜ両者の違いを明確に理解しておくべきなのかを以下の2つに分けて解説します。
- カスハラとクレームを区別しないことのリスク
- 違いを線引きすることの効果
それぞれ詳しくみていきましょう。
カスハラとクレームを区別しないことのリスク
カスハラとクレームでは、企業として取るべき対応方針が大きく異なります。しかし、実際の現場では「これはカスハラ?それとも正当なクレーム?」と判断に迷うケースも少なくありません。
もし正当なクレームをカスハラとして処理してしまえば、顧客が不満を感じ、満足度の低下やリピート率の悪化につながる恐れもあります。問題が未解決のままになると、さらに大きなクレームへと発展する可能性もあります。
一方、明らかに悪質なカスハラ行為に対しても「お客様だから」と対応を続けてしまうことは、従業員の心身にとって負担です。精神的な疲弊が積み重なれば、モチベーションの低下や離職につながる恐れも否定できません。
また、企業としてカスハラとクレームの区別が曖昧な状態では、現場の判断が属人的になりやすく、同じような場面でも担当者によって対応にバラつきが出てしまいます。結果的に、「前は〇〇してくれた」と、過度な要求を正当化されかねません。
さらに深刻なのは、誤った対応がSNSなどで拡散され、企業の評判を傷つけるリスクです。どちらのケースも「適切な判断ができていない」ことが要因となり、ブランドイメージや信頼の損失につながりかねません。
違いを線引きすることの効果
こうしたトラブルを未然に防ぐには、「これはクレーム」「これはカスハラ」と明確に線引きするための共通認識が必要です。社内で判断基準を整えておけば、現場のスタッフは迷わず対応でき、精神的な負担も軽減されます。
また、分類が明確になれば、対応フローやエスカレーションの基準も整備しやすくなります。現場担当者が毅然とした対応を取りやすくなり、自らを過剰に犠牲にする必要もありません。
管理職や人事の立場でも、「これはカスハラだから守るべき」と正当な判断ができるようになります。結果として、従業員を守る体制が強化され、メンタル不調や離職の抑止にもつながります。
さらに、社会的にもハラスメント対策の重要性が増している今、「カスハラは許さない」企業姿勢を明示することは、ブランド価値の向上のためにも必要です。健全な企業文化を外部にアピールするためにも、線引きの明確化をおこなうようにしましょう。
カスハラとクレームの違い
カスハラは、一見すると通常のクレームと区別が難しい場合もありますが、本質は大きく異なります。ここでは以下の3つに分けて、カスハラとクレームの違いを、具体的に解説します。
- カスハラは
- クレームとは
- どこからがカスハラ?判断基準をフローチャートで解説
それぞれ詳しくみていきましょう。
カスハラとは
カスハラは、顧客による従業員への暴言や脅迫、過度な要求など、業務の適正な範囲を超えた言動を指します。厚生労働省では「顧客や取引先から受ける著しい迷惑行為」と定義しており、従業員の心身の健康を損なう重大な問題として認識されています。
具体的な例は、以下のケースです。
- 営業時間終了後も長時間にわたり店舗に留まり、従業員を拘束する
- 「クビにしてやる」などの脅迫や、人格を否定する発言を繰り返す
- SNSでの根拠のない誹謗中傷の投稿や拡散
このようなカスハラを放置すると、従業員のメンタルヘルスの悪化や、事実に基づかない悪評の拡散にもつながってしまいます。
カスハラの具体例や放置するリスクは以下の記事で詳しく解説しています。

クレームとは
一方、クレームは商品やサービスに関する正当な苦情や要求を指します。
以下が該当例です。
- 商品の品質や機能が事前の説明と異なる場合の返品要求
- 届いた商品に破損や不具合があった際の交換依頼
これらは顧客の正当な権利として認められる要求であり、企業側の改善につながる重要なフィードバックとなります。
以下の記事では、クレーム時の対応のポイントを紹介しています。

どこからがカスハラ?判断基準をフローチャートで解説
クレームとカスハラの最大の違いは、要求の合理性にあります。正当なクレームは、商品やサービスに関する具体的な問題であり、改善や補償を求める内容が合理的な範囲内です。
一方で、カスハラには合理性がありません。特徴は以下のとおりです。
- 要求の内容が過剰または不合理
- 暴言や脅迫など、不適切な言動を伴う
- 特定の従業員への執着や過度な個人攻撃がある
この違いを適切に判断できなければ、従業員の保護と顧客満足度の両立が困難です。企業は明確な基準を設け、それぞれの状況に応じた適切な対応を取ることが求められています。
「これはクレームなのか?それともカスハラか?」と判断に迷った際は、社内で定めたフローチャートなどの判断ツールを活用することで、客観的な線引きが可能になります。
たとえば以下の図の流れで確認すると、判断がスムーズです。
カイクラでは、上記フローチャートを含めたカスハラ対策のお役立ち資料を用意しています。社労士監修で従業員を守るための対策を詳しく解説していますので、下記よりお気軽に無料ダウンロードしてください。
\社労士が監修!/
カスハラ対策の資料をダウンロード
▲従業員と企業を守るための具体的な対策を解説
クレームではなくカスハラと判断されるケース5つ
クレームとカスハラは似ている側面も多く、判断に迷うこともあるのではないでしょうか。クレームではなくカスハラと判断される具体的なケースは以下の5つです。
- 精神的な攻撃
- 身体的な攻撃
- 性的な言動
- 継続的もしくは執拗な言動
- 拘束的な言動
カスハラと判断されるのは、いずれも顧客としての適切な範囲を超えた行為です。
1.精神的な攻撃
精神的な攻撃は、言葉や態度によって相手を傷つける行為です。具体的には、以下の暴言や罵倒が挙げられます。
▼暴言や罵倒の具体例
- 「バカ」「殺す」などの侮辱的な言葉の使用
- 怒鳴ったり、大声で叱責したりする行為 など
また、以下の脅迫的な言動も精神的な攻撃の一種です。
▼脅迫的な言動の具体例
- 「クビにしてやる」「お前の社会的地位を落としてやる」などの脅し
- 「お前のことを調べてSNS上に公開してやる」など、個人情報の流出をほのめかしたりする行為 など
これらの言動は従業員に深刻な精神的ダメージを与える恐れがあり、たとえ要求に妥当性があっても、暴言や罵倒、脅迫はカスハラに該当します。
2.身体的な攻撃
身体的な攻撃は、相手の身体や所有物に危害を加える行為です。具体的には、以下が挙げられます。
▼身体的攻撃の具体例
- 物を投げる、叩くなどの直接的な暴力
- 威圧的な態度や姿勢 など
また、必要以上に身体に触れるような行為も、身体的な攻撃に含まれます。これらの行為は従業員の身体的安全を脅かし、深刻な場合は法的問題にも発展するため、組織で対応しましょう。
3.性的な言動
性的な言動は、相手の尊厳を傷つける不適切な性的表現や行動です。
▼性的な言動の具体例
- 性的な冗談や下ネタを言う
- 外見に関する不適切なコメントをする
- ジロジロみる
- わいせつな画像を見せる
- 性的なジェスチャーをする など
これらの行為は、従業員に不快感や羞恥心を与えます。
4.継続的もしくは執拗な言動
一度であれば見逃すような言動でも、繰り返しおこなうことでカスハラに該当するケースがあります。
▼継続的もしくは執拗な言動の具体例
- 同じ内容で何度も電話やメールをする
- 業務時間外に頻繁に連絡する
- 質問に対して回答しても聞き入れずに質問を繰り返す など
継続的もしくは執拗な言動は、従業員の時間と精神的エネルギーを不当に奪い、業務効率を低下させる要因です。
5.拘束的な言動
最後は、顧客が従業員の行動の自由を制限する行為です。
▼拘束的な言動の具体例
- 会社や店舗に不当な居座りをする
- 長時間の対応を強要する
- 終業時間を過ぎても帰らせない
- 退去要請を無視する
- 長時間に渡り世間話をしてくる など
拘束的な言動は、従業員の私生活を侵害し、過度の負担を強いることになります。
ここで挙げたように、カスハラは従業員個人で対応するには難しい問題です。そのため、従業員個人ではなく組織としての速やかな対応が求められます。
「とはいえ、組織で取り組むのはハードルが高い」と感じる方に向けて、ここからはカスハラを放置するデメリットを紹介します。
企業がとるべきカスハラ対策5つと具体例
カスハラ、企業にとって避けては通れない重要な問題です。ここでは、以下の対策を紹介します。
- カスハラの対応マニュアルを作成する
- 従業員の研修を実施する
- カスハラが起きにくい状況をつくる
- 相談窓口をつくる
- 証拠収集と状況把握のためのシステム導入
上記5つの対策を適切に実施することで、カスハラのリスクを軽減し、従業員を守りつつ、顧客との健全な関係維持につながります。
さらに東京都では、「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が施行され、要件を満たすと奨励金・補助金が支給されます。詳しくは、以下の記事をご覧ください。

1.カスハラの対応マニュアルを作成する
まず必要なのは、対応の指針を明文化したマニュアルの整備です。マニュアルには、以下の項目を明確に記載しましょう。
- カスハラの定義
- よくある事例とそれに対する対応例
- エスカレーションの流れや責任者の明示
たとえば、あるA病院では、患者やその家族からの暴言・クレームが常態化していたことをきっかけに、理事が中心となり「ペイシェントハラスメント対応マニュアル」を策定しました。トップ自らの経験も踏まえて指針を作成し、院内ポータルやホームページで方針を明示したことで、従業員が安心して対応できる体制が整いました。
参考:トップの意識の高さからマニュアル策定やHPへの対応方針を公開
マニュアルをもとに従業員への教育を実施すると、適切な対応方法を全社員に周知できます。個人の判断による対応のばらつきを防げるので、会社として一貫した対応が可能です。
カスハラの対応マニュアルの詳しい作成方法は、下記の記事をご参照ください。

2.従業員の研修を実施する
マニュアルを作っても、現場で活かせなければ意味がありません。そこで次のステップは、従業員が実際に対応できるように研修を実施することです。
とくに効果的なのが、実際のカスハラ事例を使ったロールプレイング研修です。迷惑行為への対処法を体感的に学ぶことで、いざという場面でも冷静に行動できる自信につながります。
イオン同友店会では、グループ店舗の従業員向けにカスハラ動画研修を導入しました。法律の専門家や教育コンサルタントの監修のもと、実例や厚労省のガイドラインを取り入れた動画を制作し、理解を深める教育ツールとして活用しています。
3.カスハラが起きにくい状況をつくる
カスハラは「起きてから対応する」ことだけではなく、「起きにくい環境を整える」ことも大切です。
たとえば訪問対応の場面では、複数人で対応することにより抑止力が働き、威圧的な言動の防止につながります。また、性的ハラスメント対策として、女性スタッフだけが勤務する時間帯を避け、男性スタッフと組み合わせて配置することも有効です。
加えて、企業としてのスタンスを明示することもカスハラに対する抑止効果があります。
クラウド会計ソフトのfreeeでは、カスハラに関する社外向けポリシーを公開しました。「要求の妥当性が欠ける」「態様が不相当」と判断した場合には、サービス提供をお断りする可能性があると明記しています。
参考:カスタマーハラスメントへの取組により従業員の安心感を獲得!
4.相談窓口をつくる
従業員が一人でカスハラ対応を抱え込まないようにするには、安心して相談できる窓口の整備が必要です。
ヤマト運輸では、コールセンターのオペレーター向けにカスハラ実態調査を実施した結果、8割以上が被害経験ありと判明しています。その後、対応マニュアルを整備し、「お客様サービスセンター」にてカスハラ専用相談も受け付ける体制を構築しました。
マニュアルに沿った対応だけではなく、「この場合はこう考えてみては」とOJT的なアドバイスもおこない、相談者の判断力向上にもつなげています。
5.証拠収集と状況把握ができる環境をつくる
最後の対策は、証拠収集と状況把握ができる環境整備です。
具体的には、店舗や事務所に防犯カメラを設置することが効果的です。防犯カメラがあれば、店舗や事務所内の状況を映像で記録できるため、カスハラ発生時の証拠として活用できます。
電話対応の場合は、通話録音が効果的です。電話での顧客対応を録音・管理することで、客観的な事実確認や分析ができるようになります。
通話録音方法はさまざまですが、なかでもおすすめなのはCTI(Computer Telephony Integration)や自動録音機能が搭載されているシステムの導入です。
これらのシステムには、通話録音以外にも電話対応をスムーズにする便利な機能が搭載されています。
たとえば受電時に顧客情報がポップアップ表示される機能搭載のシステムを導入すれば、過去にカスハラに該当する行為をした顧客からの受電を識別できます。その識別機能により「上司以外は電話に出ない」などの柔軟な対応も可能です。
カスハラ対策全般に関して詳しく知りたい方は、下記をご覧ください。

カスハラ対策にはカイクラがおすすめ
カスハラの対策として、システムの活用は欠かせません。
電話対応でカスハラ対策をする場合、多くの役立つ機能が搭載されているコミュニケーションプラットフォーム「カイクラ」がおすすめです。
カイクラを使えば、以下の対策・対処ができるようになります。
▼対策
- 受電時に顧客情報がポップアップされるため、カスハラと思われる顧客かどうか確認できる
- 過去のコミュニケーション履歴を確認できるため、トラブルがあった顧客からの連絡を把握できる
▼対処
- 自動録音されているため何かあった際のエビデンスが確保できる
- 電話内容をテキスト化できるため、録音を聞かなくても会話内容が把握できる

▲顧客情報画面のイメージ
カイクラはカスハラ対策に必要な機能を幅広く備えたツールです。
通話録音で客観的な証拠を残し、過去の対応履歴を一元管理してカスハラの履歴を一目でわかるようにすることで、従業員の負担を最小限に抑えた対応が可能です。
さらに、カスハラ対策を効果的におこなうためのお役立ち資料も用意しております。カスハラ対策の強化を検討されている企業の方は、ぜひ以下よりお気軽にダウンロードしてください。
\社労士が監修!/
カスハラ対策の資料をダウンロード
▲従業員と企業を守るための具体的な対策を解説
まとめ:カスハラとクレームの違いを見極め、従業員を守ろう
本記事では、カスハラとクレームの違いを詳しく解説してきました。最も重要なポイントは、顧客からの申し出が正当なクレームなのか、カスハラなのかを適切に判断することです。
その判断基準となるのが「要求の妥当性」と「行動の適切さ」です。正当なクレームは、商品やサービスに関する具体的な問題に基づいており、その要求内容に合理性があります。一方、カスハラは過剰な要求や不適切な言動を伴うものです。
しかし実際の現場では、この境界線の判断に迷うケースも少なくありません。判断を誤れば、従業員のメンタルヘルス悪化や企業イメージの低下など、深刻な問題につながる可能性があります。
そこで、カスハラ対応の具体的な判断基準や対策方法をまとめた資料をご用意しました。無料でダウンロード可能ですので、ぜひお手元でご活用ください。
\社労士が監修!/
カスハラ対策の資料をダウンロード
▲従業員と企業を守るための具体的な対策を解説