「カスタマーハラスメント」という言葉を耳にしたことはありますか?クレームと同じ文脈で使用されることもあるため「両者の違いはどこにある?」と疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、カスタマーハラスメントとクレームの明確な違いを詳しく解説します。
カスタマーハラスメントと判断されやすいケースや、企業が取るべき具体的な対策も紹介するので、最後までご一読ください。
カスタマーハラスメントへの理解を深め、適切な対応方法を学ぶことと並行して、事実確認ができる環境を整えることも大切です。
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カスタマーハラスメント(カスハラ)とクレームの違い
カスタマーハラスメントとクレームの最大の違いは、要求の妥当性と行動の適切さにあります。
カスタマーハラスメントは不当で社会的に不適切な行為である一方で、クレームは正当な要求や改善の申し出です。
この違いを理解できると、クレームとカスタマーハラスメントを明確に区別でき、顧客と従業員に対して適切な対応が取れます。両者の違いは以下です。
商品やサービスに対する顧客からの正当な苦情や改善要求クレームの例
- 1回しか使用していないのに壊れた商品を交換してほしい
- 以前よりも使いにくくなったサービスを改良してほしい など
▼カスタマーハラスメント
顧客が自身の立場を悪用して行う理不尽な要求や不適切な言動カスタマーハラスメントの例
- 商品が壊れたことを大声で迫り、土下座を強要する
- サービスについてインターネットで誹謗中傷し、拡散する など
カスタマーハラスメントとは「顧客が自身の立場を悪用して行う理不尽な要求や不適切な言動」のことです。
たとえば、提供された商品やサービスに実際の問題がないにもかかわらず過剰な補償を求めたり、対象と全く関係のない要求をしたりする行為が該当します。
また、要求内容に妥当性があるにもかかわらず、その手段が社会的に不適切な場合もカスタマーハラスメントと判断されます。具体的には、以下の行為です。
- 大声で謝罪を迫る
- ネットでの誹謗中傷を匂わせる
- 土下座を強要する など
暴力や脅迫などの犯罪行為に発展する場合もあり、許されるものではありません。
一方、クレームは商品やサービスに対する「顧客からの正当な苦情や改善要求」を指します。クレームの特徴は、その要求に妥当性があり、かつ要求の手段が社会的に適切である点です。
クレームは、企業にとって貴重なフィードバックとなり、サービス向上や商品改善のきっかけとなる重要な顧客の声です。
カスタマーハラスメントが増加した主な背景
近年、カスタマーハラスメントの増加が社会問題として注目されています。この背景には、主に2つの要因があります。
1つ目は、SNSの普及による顧客の発信力の増大です。
ソーシャルメディアの発達により、顧客は簡単に自分の経験や意見を広く公開できるようになりました。良質なサービスは評価される一方で、不満や批判も拡散されるリスクがあります。この状況下で、一部の顧客がSNSでの批判を武器に、過剰な要求をするケースが増えています。
2つ目の要因は、「お客様は神様」という言葉の誤った解釈です。
上記は本来「お客様の満足を第一に考えることが大切だ」と顧客満足の重要性を表現している言葉です。
しかし「お客様の言うことは何でも聞かなければいけない」という間違った理解が一部に浸透し、過度な顧客至上主義を生んでいます。顧客の権利意識の高まりが不当な要求や行動を正当化した結果が、カスタマーハラスメントです。
カスタマーハラスメントの増加は、顧客の発信力の増大と間違った言葉の解釈が組み合わさり、顧客の心理や行動に変化をもたらしたことが要因といえます。企業はこの現状を理解した上で、適切な顧客対応と従業員保護のバランスを取ることが求められています。
カスタマーハラスメントに関して網羅的に知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
カスタマーハラスメントの現状
カスタマーハラスメントは、多くの業界で深刻な問題です。日本労働組合総連合会が2022年に実施した『カスタマー・ハラスメントに関する調査』によると、その実態が明らかになりました。
上記の調査結果によれば、直近3年間でカスタマーハラスメントを経験した労働者は全体の約半数に上ります。この数字は、多くの従業員が日常的にカスタマーハラスメントのリスクにさらされている点を示しています。
カスタマーハラスメントは、従業員やパートナーの精神的健康を害するだけではなく、業務効率の低下や離職率の上昇にもつながるリスクがあるため、組織単位で対策に取り組むことが重要です。
カスタマーハラスメントの取り組み事例は下記の記事で紹介しているので、ぜひご参照ください。
クレームではなくカスタマーハラスメントと判断されるケース5つ
クレームとカスタマーハラスメントは似ている側面も多く、判断に迷うこともあるのではないでしょうか。クレームではなくカスタマーハラスメントと判断される具体的なケースは以下の5つです。
- 精神的な攻撃
- 身体的な攻撃
- 性的な言動
- 継続的もしくは執拗な言動
- 拘束的な言動
カスタマーハラスメントと判断されるのは、いずれも顧客としての適切な範囲を超えた行為です。
【ケース1】精神的な攻撃
精神的な攻撃は、言葉や態度によって相手を傷つける行為です。具体的には、以下の暴言や罵倒が挙げられます。
▼暴言や罵倒の具体例
- 「バカ」「殺す」などの侮辱的な言葉の使用
- 怒鳴ったり、大声で叱責したりする行為 など
また、以下の脅迫的な言動も精神的な攻撃の一種です。
▼脅迫的な言動の具体例
- 「クビにしてやる」「お前の社会的地位を落としてやる」などの脅し
- 「お前のことを調べてSNS上に公開してやる」など、個人情報の流出をほのめかしたりする行為 など
これらの言動は従業員に深刻な精神的ダメージを与える恐れがあり、たとえ要求に妥当性があっても、暴言や罵倒、脅迫はカスタマーハラスメントに該当します。
【ケース2】身体的な攻撃
身体的な攻撃は、相手の身体や所有物に危害を加える行為です。具体的には、以下が挙げられます。
▼身体的攻撃の具体例
- 物を投げる、叩くなどの直接的な暴力
- 威圧的な態度や姿勢 など
また、必要以上に身体に触れるような行為も、身体的な攻撃に含まれます。これらの行為は従業員の身体的安全を脅かし、深刻な場合は法的問題にも発展するため、組織で対応しましょう。
【ケース3】性的な言動
性的な言動は、相手の尊厳を傷つける不適切な性的表現や行動です。
▼性的な言動の具体例
- 性的な冗談や下ネタを言う
- 外見に関する不適切なコメントをする
- ジロジロ見る
- わいせつな画像を見せる
- 性的なジェスチャーをする など
これらの行為は、従業員に不快感や羞恥心を与えます。
【ケース4】継続的もしくは執拗な言動
一度だけなら見逃すような言動でも、繰り返し行うことでカスタマーハラスメントに該当するケースがあります。
▼継続的もしくは執拗な言動の具体例
- 同じ内容で何度も電話やメールをする
- 業務時間外に頻繁に連絡する
- 質問に対して回答しても聞き入れずに質問を繰り返す など
継続的もしくは執拗な言動は、従業員の時間と精神的エネルギーを不当に奪い、業務効率を低下させる要因です。
【ケース5】拘束的な言動
最後は、顧客が従業員の行動の自由を制限する行為です。
▼拘束的な言動の具体例
- 会社や店舗に不当な居座りをする
- 長時間の対応を強要する
- 終業時間を過ぎても帰らせない
- 退去要請を無視する
- 長時間に渡り世間話をしてくる など
拘束的な言動は、従業員の私生活を侵害し、過度の負担を強いることになります。
ここで挙げたように、カスタマーハラスメントは従業員個人で対応するには難しい問題です。そのため、従業員個人ではなく組織としての速やかな対応が求められます。
「とはいえ、組織で取り組むのはハードルが高い」という方に向けて、ここからはカスタマーハラスメントを放置するデメリットを紹介します。
企業がカスタマーハラスメントを放置するデメリット3つ
企業がカスタマーハラスメントを放置するデメリットは、以下の3つです。
- 従業員の離職や休職につながる
- 会社のイメージ低下につながる
- 安全配慮義務の違反につながる
これらのデメリットを考慮すると、企業がカスタマーハラスメントに対して無視する方がリスクと言えます。従業員を守り、企業の評判を維持し、法的リスクを回避するためにも、しっかりと対策しましょう。
【デメリット1】従業員の離職や休職につながる
カスタマーハラスメントを放置すると、従業員の心身の健康に重大な影響を与えかねません。継続的なストレスや精神的苦痛にさらされると、従業員は疲弊し、最終的に休職や離職につながる恐れがあります。
従業員の休職や離職は、人材不足につながります。もし経験豊富な従業員が離職もしくは休職した場合は、業務の品質や効率にも大きく影響することも懸念点です。
また、カスタマーハラスメントが原因で従業員が離職した評判が広まれば、「従業員を守らない企業」といったネガティブな印象がつき、新たな人材の獲得が難しくなる恐れもあります。
【デメリット2】会社のイメージ低下につながる
現代のデジタル社会では、企業の評判は瞬く間に広がります。
カスタマーハラスメントの被害を受けた従業員や、その状況を目撃した方が、SNSなどのプラットフォームを通じて経験を共有する可能性があるからです。
企業がSNSの投稿に対して適切に対応しなかった場合、その批判は大きな反響を呼ぶ可能性があります。たとえ共有された情報が正確ではなくても、一度ネガティブな評判が広まると、企業イメージの回復には多大な時間と労力が必要です。
SNSの投稿がきっかけとなり、企業のイメージが低下すると、顧客離れや優秀な人材の応募減少など、ビジネスに直接的な影響を及ぼす恐れもあります。
【デメリット3】安全配慮義務の違反につながる
企業には、従業員の健康と安全を守る法的責任があります。
「安全配慮義務」と呼ばれるもので、労働契約法第5条に明確に定められています。
(引用)
(労働者の安全への配慮)
第五条使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。参考:労働契約法第5条
具体的には、労働者の生命、身体、健康が害されることのないよう、適切な労働環境を整える義務です。
カスタマーハラスメントを放置すると、この安全配慮義務に違反する恐れがあります。
従業員の精神的・身体的健康を脅かす問題に対し、組織が適切な対策を講じないことは、法的責任を問われる根拠となり得ます。最悪の場合、従業員から損害賠償を請求されるリスクもあるため、カスタマーハラスメントには組織単位の取り組みが必要です。
「とはいえ、具体的にはカスタマーハラスメントに対しどのように取り組んだらいいんだろう」という方に向けて、ここからは具体的な対策を紹介します。
企業が取るべきカスタマーハラスメントの対策5つ
カスタマーハラスメントは、企業にとって避けては通れない重要な問題です。ここでは、以下の対策を紹介します。
- カスタマーハラスメントの対応マニュアルを作成する
- 従業員の研修を実施する
- カスタマーハラスメントが起きにくい状況をつくる
- 相談窓口をつくる
- 証拠収集と状況把握のためのシステム導入
上記5つの対策を適切に実施することで、カスタマーハラスメントのリスクを軽減し、従業員を守りつつ、顧客との健全な関係維持につながります。
【対策1】カスタマーハラスメントの対応マニュアルを作成する
カスタマーハラスメントへの対応を会社として統一するために、マニュアルの作成が不可欠です。このマニュアルには、以下を明確に記載しましょう。
- 言葉の定義
- 具体的な事例
- 対応手順 など
マニュアルをもとに従業員への教育を実施すると、適切な対応方法を全社員に周知できます。個人の判断による対応のばらつきを防げるので、会社として一貫した対応が可能です。
カスタマーハラスメントの対応マニュアルの詳しい作成方法は、下記の記事をご参照ください。
カスタマーハラスメントだけではなく日常的なクレームに関しても、対応マニュアルを作成することで一貫性のある対応ができます。
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【対策2】従業員の研修を実施する
マニュアルを作成しただけでは、十分ではありません。
マニュアルを作成した後は、実際の状況下で適切に対応できるように定期的な研修の実施が重要です。研修では、カスタマーハラスメントの具体的な事例を用いたロールプレイングなどを通じて、実践的なスキルの習得を目指します。
実践的に迷惑行為や悪質なクレームへの対応方法を学ぶことで、より幅広い状況に対応できるようになります。
企業にとって必要なカスタマーハラスメントの研修に関して詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。
【対策3】カスタマーハラスメントが起きにくい状況をつくる
カスタマーハラスメントを未然に防ぐための環境整備は、従業員の安全と健康を守るために重要です。
たとえば、客先への訪問時に複数人で対応することが挙げられます。複数人で対応すると、1人で対応する場合に比べて心理的抑止力が働くため、カスタマーハラスメントのリスクを大幅に軽減できます。
過去にトラブルがあった顧客対応は、とくに慎重に判断すべきです。事前に対応策を検討し、必要に応じて上司や同僚のサポートを受けながら対応を進めましょう。
接客業の場合は、シフトの組み方にも工夫が必要です。たとえば、女性スタッフだけの時間を作らず、男性スタッフも必ず店内にいるよう配置することで、威圧的な態度の抑制や性的ハラスメントの予防につながります。
カスタマーハラスメントではなくクレームについては、以下の防止策があります。
- 商品やサービスに不備がないかチェックを強化する
- スタッフの教育を徹底する
クレームを未然防止するための対応策は下記の記事で解説しています。気になる方はぜひチェックしてください。
【対策4】相談窓口をつくる
カスタマーハラスメントやクレーム対応を効果的にするには、専門の相談窓口の設置が不可欠です。
相談窓口は、問題発生時に従業員が即座に相談でき事例を社内で共有できる場所であると同時に、従業員を守る重要な役割も果たします。
顧客対応に関して従業員が相談できる場所を作ることで、従業員の精神的な負担を軽減し安心感を与えることにつながります。
また相談を共有することで「これはクレームなのか、それともカスタマーハラスメントなのか」「どのような対策を取るべきか」などを組織的に判断し迅速に対応できる点もメリットです。従業員個人で判断せず組織で方針を決定し対応することは、問題の早期解決につながります。
【対策5】証拠収集と状況把握ができる環境を作る
最後の対策は、証拠収集と状況把握ができる環境整備です。
具体的には、店舗や事務所に防犯カメラを設置することが効果的です。防犯カメラがあれば、店舗や事務所内の状況を映像で記録できるため、カスタマーハラスメント発生時の証拠として活用できます。
電話対応の場合は、通話録音が効果的です。電話での顧客対応を録音・管理することで、客観的な事実確認や分析ができるようになります。
通話録音方法はさまざまですが、なかでもおすすめなのはCTI(Computer Telephony Integration)や自動録音機能が搭載されているシステムの導入です。
これらのシステムには、通話録音以外にも電話対応をスムーズにする便利な機能が搭載されています。
たとえば着信時に顧客情報がポップアップ表示される機能搭載のシステムを導入すれば、過去にカスタマーハラスメントに該当する行為をした顧客からの受信を識別できます。その識別機能により「上司以外は電話に出ない」などの柔軟な対応も可能です。
通話録音の法的側面やメリットは「クレーム対策の通話録音は違法?導入のメリット4つや選び方を解説」で詳しく解説しています。カスタマーハラスメント対策全般に関して詳しく知りたい方は、下記をご覧ください。
カスタマーハラスメント対策にはカイクラがおすすめ
カスタマーハラスメントの効果的な対策として、システムの活用が欠かせません。
電話対応でカスタマーハラスメント対策をする場合、多くの役立つ機能が搭載されているコミュニケーションプラットフォーム「カイクラ」がおすすめです。
カイクラを使えば、以下の対策ができるようになります。
- 自動録音ができるから、客観的な事実確認ができる
- 電話相手の情報を一元管理できるから、過去にトラブルがあった顧客からの連絡を把握できる
- 電話内容をテキスト化できるから、録音を聞かなくても会話内容が把握できる
- 受信時に顧客情報がポップアップされるから、カスタマーハラスメントと思われる顧客かどうか確認できる
カイクラはカスタマーハラスメント対策に必要な機能を幅広く備えたツールです。
通話録音で客観的な証拠を残し、過去の対応履歴を一元管理してカスタマーハラスメントの履歴を一目でわかるようにすることで、従業員の負担を最小限に抑えた対応が可能です。
カスタマーハラスメント対策の強化を検討されている企業の方は、ぜひ以下のサービスページからカイクラの詳細をご覧ください。
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まとめ:カスタマーハラスメントとクレームの違いは妥当性と適切さ
カスタマーハラスメントとクレームの最大の違いは、要求の妥当性と行動の適切さにあります。
カスタマーハラスメントは顧客による不当で社会的に不適切な行為であり、一方でクレームは正当な要求や改善の申し出です。企業はこの違いをしっかりと理解し、適切に対応しましょう。
カスタマーハラスメントの対策には、マニュアルの作成、従業員研修の実施、相談窓口の設置などが効果的です。また証拠収集と状況把握のための環境整備も、重要な対策のひとつです。
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