住宅業界の「契約」大転換点。工務店が気をつけるべき2020年4月の民法改正と対応策

「民法改正は工務店にはどのような影響があるのだろう…」

と感じている方。

2020年4月の民法改正によって明治時代に考えられた条文が現代化し、よりわかりやすくなりました。特に「瑕疵が契約不適合になる」など工務店への影響が大きい部分もあり、トラブル防止にはしっかりと理解しておくことが欠かせません。

変更点を理解したうえで対策を考えておくと、民法改正後もスムーズな顧客対応が実現します。

とはいえ、具体的に気をつけるべきことは、なかなかわかりにくいですよね。

そこで今回は、

  • 2020年4月の民法改正で、工務店が知っておいた方が良い知識
  • 2020年4月の民法改正で変更され、工務店に大きな影響を与える部分
  • 民法改正にともなって、工務店が注意したいポイントや対策

を紹介します。

まずは2020年4月の民法改正について、ざっくりと理解しましょう!

(※本記事は2020年8月時点での情報を元に作成しています。)

2020年4月の民法改正で、工務店が知っておいた方が良い知識

今回の民法改正において、工務店に影響を与えそうな条文を見てみましょう。

改正民法562条1項
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不当な負担を課するものではないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。

上記の条文は、以下のように考えるとわかりやすいです。

  • 買主=注文者、お客さま
  • 売主=請負人、工務店

出典:ナイスビジネスレポート「民法改正直前特別講座 請負契約書・契約約款見直しのポイント」
https://www.nice.co.jp/nbr/20200315_01/

これまでの内容は明治時代に考えられたものであり、現代ではわかりにくいこともありました。そこで今回、現代化して理解しやすい形に変更することにしたのです。

具体的な変更点は、次で詳しくお伝えしますね。

なお、上記の条文は売買の場合のものであり、工務店の場合は通常請負ではないため、直接適用されるわけではありませんが、改正民法第559条は「この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。」と規定しており、有償での請負契約には上記第562条第1項が準用されることとなります。

2020年4月の民法改正で変更され、工務店に影響を与える部分

民法改正における変更点として、

  • 瑕疵から契約不適合に変更される
  • 瑕疵担保責任の請求方法が4つになる
  • 瑕疵担保責任を負うべき期間が変更になる

の3つを解説します。

変更点1:「瑕疵」から「契約不適合」に変わる

そもそも瑕疵とは「本来あるべき機能や品質、性能、状態などがそなわっていないこと」です。

これまでも「契約の内容に適合していない」という意味でも使われていましたが、今回の改正で「目的物の種類や品質、数量などが契約の内容に適していないとき」と、よりわかりやすい表現に変わりました。

この変更は過去の判例に沿って使用する用語が変わっただけで、お客さまへの責任が重くなるわけではないとされています。言葉の意味が、よりハッキリとわかりやすくなっています。

変更点2:責任期間の考え方が変わり、ケースによって責任を負う期間が異なる

民法改正によって、契約不適合の責任が以下のように変更になります。

【変更前】
引き渡し日を基準として、以下の期間で責任を負うものとする。

  • 建物その他の土地の工作物:5年
  • 石造やコンクリート造など強固な建物:10年
  • その他:1年

【変更後】
発注者が契約不適合(数量の不足を除きます)を知った日から1年以内に契約不適合であることを通知しないと契約不適合責任を追及できない(但し、工務店が不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかった場合はこの限りではない)。消滅時効は、権利を行使することができることを知った(当該契約不適合を知った)ときから5年、もしくは引き渡しから10年であり、その間は発注者の請求により責任を負う必要がある。

改正で消滅時効の基準となる日が一部変わり、5年の消滅時効については発注者が契約不適合に気付いた日を起点と考えています。これまで建物の種類によって決められていた年数も、5年もしくは10年で統一されました。

石造などの建物はほとんど変わりませんが、「その他」に分類されていた小さな工事まで最長10年の契約不適合責任を求められることになります。

変更点3:契約不適合責任の請求方法が4つになる

3つ目は「契約不適合責任の請求方法が4つになる」です。

先ほど紹介した瑕疵担保責任があったとき、これまで発注者の対処法は「修補」「損害賠償請求」「契約解除」の3つでした。

民法改正によって新たな方法が追加され、以下の4つとなっています。

  • 追完請求権:契約の内容にそぐう形になるように、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分を追加することができる権利のこと
  • 代金減額請求権:契約不適合なうえに追完もされない場合、代金を減額するように請求できる権利のこと
  • 損害賠償請求権:損害賠償を請求できる権利のこと
  • 契約解除権:契約そのものを解除できる権利のこと

民法改正によって、契約不適合が発覚したときに発注者の選択できる権利が増えました。

上記のとおり、契約不適合責任へと改正されたわけですが、民法改正がニュース等で数多く報じられたことにより、今までそのような問題を意識していなかった一般の人が「これは契約不適合ではないか」といった考えを持つことにより、クレームが増える可能性も否定はできません。

このクレームを防ぐ対策は次で紹介しますので、参考にしてみてください。

民法改正にともなって、工務店が注意したいポイントや対策

続いては、工務店がこれから注意したいポイントやトラブル対策として、

  1. 種類、品質、数量の差異を追求されないように、すり合わせをしておく
  2. 自社の品質基準をハッキリと説明したうえで、書面に契約内容を記録する
  3. 契約約款の中に「契約不適合責任期間」の条文を作成しておく
  4. 「発注者の中止・解除権」を設定し、一定の対価は得られるようにする
  5. 通話の録音機能などを活用して、発注者との会話を記録する

の5つを解説しますね。

ポイント1:種類、品質、数量の差異を追求されないように、すり合わせをしておく

瑕疵から契約不適合に変更になったとお伝えしましたが、工務店の責任の範囲が広くなったわけではありません。ただしいずれにせよクレームを防ぐためには種類や品質、数量について、明確な基準を設けておく必要があります。

次で種類、品質、数量で定めておきたい具体例を紹介しますね。

種類:仕様変更はあらかじめ説明する、同じ機能の製品は使用できる契約を結ぶ

使用する素材の種類は、以下の2つに注意しましょう。

  • 仕様変更があるときは前もって説明する
  • 種類が異なっても同じ機能を持つ製品であれば、使用できる契約を結んでおく

種類のトラブルは、例えば「設計段階ではA社の断熱材を使うと決めていたのに、実際にはB社の断熱材が使われていた」などです。

この場合、工務店はA社とB社の性能が同じであるために問題ないと判断したことが多いです。しかし発注者にとっては予定していたものと異なるため、契約不適合だと主張されてしまうことも考えられます。

このようなトラブルを防ぐためにも、同じ性質の商品は使用しても良い契約を結んでおきましょう。

品質:性能値の基準などは数字をもとに説明したうえで契約する

品質に関するクレームを防ぐためには、性能値などの基準を数字で説明しておきましょう。

例えば「Aの断熱材を使用しているため、冬は寒さを感じにくい」と表現したとします。この暖かさは個人によって感じ方に差があるため、実際に住み始めてからお客さまが寒いと訴えることも少なくありません。

このようなトラブルを防ぐためにも、数字など客観的に判断できるもので効果を説明し、納得してもらったうえで契約を結ぶのが安心です。

数量:使用予定の数量はあくまで目安であることを伝える

数量は工事中に変更になる可能性もあるため、契約時の個数はあくまで目安であることを伝えておきましょう。

例えば契約時には瓦の数を「10個」で十分だと伝えていても、工事がスタートすると「7個」で足りるケースもあるかと思います。建物としては問題ありませんが、お客さまからすると「少ない個数で工事をしたのに金額は変わらない」と、トラブルに発展しかねません。

見積書などに「ここに記載している個数はあくまで目安で、変更となる可能性もあります」と注意書きしておきましょう。但し、そのように書いていたとしても、「10個」と書いていたのに「1個」に変更するようなことは認められない可能性が高いと考えられますので、可能であれば「7個~12個」のように、確実に収まる範囲を記載し、その範囲でのみ変動させることが望ましいです。

ポイント2:自社の品質基準をハッキリと説明したうえで、書面に契約内容を記録する

契約不適合責任に関するトラブルを防ぐためには、あらかじめ自社の品質基準をハッキリさせ、書面に記録しておきましょう。

おすすめは「請負契約書」と「請負契約約款」を用意することです。

  • 請負契約書:工事について請け負った内容を記したもの
  • 請負契約約款:契約に関する取り決めの1つ1つの条項

口頭の約束でも契約となるケースもありますが、それでは「言った・言っていない」のトラブルが発生しやすくなります。お互い客観的に判断できるように、書面でしっかりと契約内容を残し、その都度確認できるようにしておくと安心です。

ポイント3:契約約款の中に「契約不適合責任期間」の条文を作成しておく

先ほどお伝えした契約約款の中に、「契約不適合責任期間」に関する条文を記載しておきましょう。

例えば、前述のとおり民法上の契約不適合責任の期間は、発注者が知った時からスタートするのですが、引き渡し時点を基準に期間を定めておくことが考えられます。
ただし保証期間を短くしすぎると、お客さまは不満を感じることや、場合によっては消費者契約法により無効と判断される可能性もあります。その工事部位はどれくらいで経年劣化の症状が見られるか、保証できそうな期間をふまえたうえで決めるのがおすすめです。

ポイント4:「発注者の中止・解除権」を設定し、一定の対価は得られるようにする

工事がお客さまのやむを得ない事情で中止になっても、ある程度の対価は得られるように「発注者の中止・解除権」を設定しておきましょう。

例えば、発注者の都合で工事の中止を申し出た場合、工務店は「すでに工事済みの部分と注文済みの工事材料などの費用、逸失利益などが請求できれば中止を受け入れられる」という文面を記載するなどです。

というのも、やむを得ない工事の中止を想定して「代金の●%の違約金を請求する」などの書き方をすると、適格消費者団体から指摘を受けるリスクがあります。
なぜなら、消費者契約法第9条第1号は「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」については、「当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える」部分については無効となる旨を定めているところ、常に一律の違約金を請求するような定めの場合、かかる平均的な損害の額を超えてしまうような事態が考えられるためです。

適格消費者団体から指摘されると、差し止め請求などが発生するリスクもあります。

「発注者の中止・解除権」を設定していれば、工事の中止を受け入れたうえで自社の損害も補うことが可能です。

ポイント5:通話の録音機能などを活用して、発注者との会話を記録する

ここまで複数のトラブルや対策を紹介しましたが、書面に加えて「発注者との会話」を録音しておくことで、よりトラブルを防ぎやすくなります。

口約束で契約となることもあるうえに、その場合は後から確認することができません。「言った・言っていない」のトラブルが発生し、裁判などに発展する可能性もあります。

このようなトラブルを防ぐためにも、録音機能のあるツールなどの導入を検討してみてください。

カイクラなら通話の録音機能などで民法改正によるトラブルを防ぐことも可能!

顧客との会話を録音するには、カイクラがおすすめです。

カイクラの特徴は、以下の3つ。

  • 着信時に顧客情報を表示するため、お客さまの情報がすぐに把握できる
  • 録音機能と文字起こし機能があるため、やり取りを後から確認できる
  • クラウド上にこれまでのやり取りを記録できるため、担当者が不在のときも対応しやすい

実際にカイクラの導入によって、電話対応のトラブルが減少した事例も少なくありません。

詳しくは導入事例をご一読ください。

工務店は民法改正によるトラブルを想定して、顧客情報を管理できるサービス導入を検討しよう

今回は、2020年4月における民法改正と工務店への影響について解説しました。

工務店は対策として、以下の5つを考えておくとトラブルを防ぎやすいです。

  1. 種類、品質、数量の差異を追求されないように、すり合わせをしておく
  2. 自社の品質基準をハッキリと説明したうえで、書面に契約内容を記録する
  3. 契約約款の中に「契約不適合責任期間」の条文を作成しておく
  4. 「発注者の中止・解除権」を設定し、一定の対価は得られるようにする
  5. 通話の録音機能などを活用して、発注者との会話を記録する

最後に紹介したカイクラなどのツールも導入しながら、顧客とのやり取りをスムーズにしていきましょう!

また言った言わないのトラブルにならないためには、契約書を書面で残すなどの基本に加え、電話などのやりとりでの記録を証拠として残すことが欠かせません。そのためには、顧客の声を録音しCRMツールにログを残しておくなど、デジタルツールの活用がオススメです。

電話の音声をテキスト化。顧客の声を集める通話録音クラウド

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