2025年4月1日に東京都で施行された「カスタマーハラスメント防止条例(通称:カスハラ防止条例)」をご存知でしょうか。この条例は、顧客からの暴言や不当な要求など、従業員の働く環境を損なう行為を防ぐための取り組みです。
全国的に増加しているカスハラは、加害者の暴言や不当な要求による従業員の離職や企業イメージの低下など、経営面の損失にもつながる恐れがあります。
企業としてカスハラに対応する際は、条例や法令に基づき、正当性や説得力がある判断が必要不可欠です。
本記事では、東京都カスハラ防止条例の概要や対象行為、支援制度を紹介します。さらに全国の条例動向や企業向けのFAQもまとめていますので、自社のカスハラ対策検討にお役立てください。
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カスハラ対策に対する奨励金や、カスハラ防止に向けた世の中の動きなど、カスハラ対策に役立つ情報もまとめていますので、あわせてご活用ください。
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▲従業員と企業を守るための具体的な対策を解説
東京都のカスハラ防止条例とは?
東京都のカスハラ防止条例は、「働く人が安心して働ける環境を整備する」ことを目的に制定されました。
ここでは、以下3つの観点から条例の内容を具体的に解説します。
- カスハラ防止条例制定の背景と目的
- カスハラ防止条例の対象となるカスハラ行為の具体例
- 支援制度と奨励金・補助金
企業が自社の取り組みを検討するうえで、条例を正しく理解することは欠かせません。では、順にみていきましょう。
カスハラ防止条例制定の背景と目的
「東京都カスハラ防止条例」は、2025年4月1日に施行されました。
顧客からの暴言や不当な要求など、全国的に増加するカスハラ問題は、一企業だけでは対応しきれない状況です。こうした背景から、全国に先駆けて東京都が制定したのが「カスハラ防止条例」です。
本条例では、「不当なクレーム」「暴言」「威圧的な態度」など従来の法制度では対応が難しかった行為も、カスハラとして明確に位置づけて規制対象としています。
本条例におけるカスハラの定義は以下です。
顧客等から就業者に対し、その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、就業環境を害するものをいう。
同時に、事業者には「都が実施する施策に協力し、カスハラ防止に主体的かつ積極的に取り組む責務」が求められています。
東京都は、「カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)」を策定し、企業が具体的な対策に踏み出せるよう後押ししています。ガイドラインをもとに各対策を整えたら、決定した方針や体制を社内規則として明文化し、業務に活用していくことが重要です。
カスハラ防止条例の対象となるカスハラ行為の具体例
カスハラにはさまざまな形があり、現場で即座に判断するのは容易ではありません。
ここでは、実際にどのような行為がカスハラになるのか、以下3つに分類して具体例をみていきましょう。
分類 | 具体例 |
---|---|
言葉によるハラスメント |
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態度によるハラスメント |
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行動によるハラスメント |
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具体例からもわかるように、カスハラは従業員の安全や企業の運営に大きな影響を及ぼします。
このため東京都では、カスハラ防止条例の施行にあわせ、事業者の対策を支援する制度を整備しました。
次章では、具体的な奨励金や補助金の内容を解説します。
支援制度と奨励金・補助金
東京都は、事業者のカスハラ防止対策を後押しするため、奨励金や補助金制度を用意しています。
概要は以下のとおりです。
企業向け奨励金 |
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団体向け奨励金 |
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団体向け補助金 |
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上記の支援制度をうまく活用すれば、企業や団体は負担を抑えつつ、実効性のあるカスハラ対策を進められます。
受け取り方法など、詳しくは以下の記事をあわせてご一読ください。

とはいえ、制度だけでは現場の問題は解決しません。企業自身が日常業務のなかでカスハラを防ぎ、従業員を守る体制を築く必要があります。
次章では、事業者に求められる具体的な対応策を解説します。
企業が求められるカスハラへの対応
カスハラ防止条例は、現場での具体的な対応を求める指針です。企業には、単に理念を掲げるだけではなく、「現場で実践できる体制づくり」を求めています。では、具体的にどのような取り組みが必要なのでしょうか。
前提として、企業には従業員の心身の安全を守る「安全配慮義務」があります。安全配慮義務とは、企業が従業員の心身の健康と安全を守るために必要な配慮をおこなう責任のことです。物理的な職場環境の整備、事故や災害を防ぐための安全対策はもちろん、長時間労働や人間関係によるストレスなど心身の不調への対応までが含まれます。
加えて、2025年の「労働施策総合推進法」改正によって、いよいよ法律での対応が義務化されることが決定しました。
そのため企業は、早急にカスハラへ対応できる仕組みを整える必要があります。
▼企業が取るべき主な対策例
- 被害や相談を匿名で受け付けられる窓口の設置
- 相談・報告内容を共有・エスカレーションできる体制づくり
- 通話記録やチャット履歴の自動保存
- 被害者の心身ケア(産業医やカウンセラーへの相談)
- 外部の専門家(弁護士、警察)と連携できる体制
とくに重要なのは「証拠を確実に残すこと」です。カスハラは、電話やオンライン接客など言葉だけのやり取りの場で発生するケースが少なくありません。やり取りをそのまま記録できる仕組みがあると、事実確認や社内共有がスムーズになります。
たとえば、電話対応におけるカスハラ対策をする場合は、通話録音できるツールがおすすめです。
コミュニケーションプラットフォームの「カイクラ」は、すべての通話を自動で録音できます。万が一トラブルに発展した際も、通話内容を聴き直し事実を正確に把握できるため、安心です。
次の章では、電話対応でのカスハラ防止に役立つコミュニケーションプラットフォーム「カイクラ」の機能を紹介します。
電話対応のカスハラ対策には「カイクラ」
前章でもお伝えしたとおり、企業のカスハラ対策では「客観的な事実確認」と「従業員を守る体制」が欠かせません。
とくに電話対応は証拠が残りにくく、現場での負担がかかる業務のひとつです。その点、「カイクラ」の持つ以下の機能は、カスハラ対策に有効です。
▼カスハラ対策に活かせるカイクラの機能
- すべての通話を自動で録音:録音忘れを防ぎ、必要なときに聞き直せる
- 電話内容をテキスト化:録音を聞かなくても会話内容が把握できる
- 顧客情報ポップアップ:受電時に顧客名や過去の対応履歴が画面に表示され、スムーズな対応ができる
- 対応履歴のメモ登録:対応ごとにメモを残せ、社内の情報共有に役立つ
録音データは、トラブル時の有力な証拠になるのはもちろん、自動録音されていることが顧客に伝われば、カスハラの抑止効果も期待できます。
さらに、顧客情報のポップアップやメモ機能は、日常業務の効率化や顧客満足度の向上にも貢献します。
つまり、「カイクラ」はカスハラ対策と業務改善の両方を実現できるツールです。機能の詳細は、以下よりご確認ください。
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全国で進む!カスハラ防止条例の動き
ここで、東京都以外の自治体の動きもあわせて確認しておきましょう。
東京都を皮切りに、カスハラ防止の取り組みは全国的に広がりをみせています。地域ごとに条例や指針の内容が異なるため、自社の事業エリアに応じた対策を検討するうえでも、最新の動向を押さえておくことが重要です。
以下に、2025年8月時点での情報をまとめました。
群馬県 | 群馬県カスタマーハラスメント防止条例
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北海道 | 北海道カスタマーハラスメント防止条例
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三重県桑名市 | 桑名市カスタマーハラスメント防止条例
|
愛知県 | 愛知県カスタマーハラスメント防止条例
|
各自治体の条例の詳細は、以下の記事にて解説していますので、あわせてご一読ください。

カスハラ防止条例の全国的な広がりは着実に進んでいます。こうした動きにあわせ、企業としても早めの対策が欠かせません。
では最後に、カスハラ対策を進めるうえで、企業がつまずきやすい質問をまとめて紹介します。
企業向け!カスハラ防止条例についてのよくある質問5つ
カスハラ対策を進めるなかで、さまざまな疑問が浮かんできた方もいるのではないでしょうか。ここでは、企業が押さえるべき代表的な質問とその回答をまとめました。
- 研修やマニュアル整備は義務か任意か?罰則はあるの?
- 小規模企業も対応が必要?
- 法的リスクを避けるにはどうすればいい?
- 現場でカスハラかどうか判断がつかない場合は?
- 現場で使える対策ツールはある?
気になる部分だけでも確認して、社内体制の整備や方針づくりにお役立てください。
Q1 研修やマニュアル整備は義務か任意か?罰則はあるの?
これまで、東京都のカスハラ防止条例で定められる責務は「努力義務」とされ、法的な義務付けはありませんでした。
しかし、2025年6月4日に、改正労働施策総合推進法が国会で可決・成立し、今後すべての企業・事業所でカスハラ対策が義務化されることが決定しました。
参考:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案の概要
対象は企業規模を問わず、小規模事業者から大企業まですべての事業者が含まれます。新しい法律は「公布から1年6か月以内に施行」とされており、現時点では2025年秋から2026年初頭が目安です。
ギリギリになって慌てるのではなく、今のうちから段階的に準備を進めておくことがリスク回避につながります。
具体的な準備や見直しのポイントとして、まずマニュアルの整備や従業員研修から始めるのが効果的です。マニュアル作成の進め方を知りたい方は、以下の記事で具体的な手順を解説しています。

カスハラ研修の重要性や実施方法は、以下の記事で詳しく紹介していますので、あわせてご一読ください。

Q2 小規模企業も対応が必要?
結論からいうと、従業員規模にかかわらずカスハラ対策は必要です。
東京都カスハラ防止条例は「都内で事業をおこなうすべての事業者」を対象としており、小規模事業者だからといって免除されるわけではありません。専任部署を設けるのが難しい場合もあるかもしれませんが、従業員が少ないほど1人あたりの負担や被害が事業全体に与える影響が大きくなります。
最低限、以下の体制づくりはおこなうようにしましょう。
▼小規模向け体制づくり
- 簡易ポスターの提示(「不当なクレームには対応しません」)
- 通話内容の記録保存(共有メモにクレーム内容を記録して共有)
- 外部専門家(弁護士、労務士)との連携先を事前に確保する
なお、支援制度の対象として小規模企業も含まれており、活用すれば負担を抑えた対策が可能です。
Q3 法的リスクを避けるにはどうすればいい?
法的リスクを最小限に抑えるためには、日頃からの備えと迅速な対応が必要です。
とくに、法令や条例に則った対応マニュアルの整備と、対応履歴の記録は欠かせません。記録があれば、万が一トラブルになった場合でも事実を証明する有力な証拠になるからです。
社内だけで抱え込まず、外部の相談先を活用することも有効です。東京都の「カスハラ対策支援窓口」、中小企業向けの無料法律相談、労働局などは、具体的な対応や法的助言を受けられる窓口として利用できます。
さらに、カスハラ防止に関する条例だけではなく、関連する法律もあわせて把握しておきましょう。詳しくは以下の記事で、企業が押さえておくべき法律をご確認ください。

Q4 現場でカスハラかどうか判断がつかない場合は?
カスハラのなかには、すぐに「これは違法だ」と断定できない、あいまいなケースも少なくありません。
こうした場合は、社内の相談窓口や弁護士などの専門家へ早めに相談し、客観的に確認してもらうことが重要です。そのためにも、日頃から社内に相談体制を整えておく必要があります。
判断に迷う行為ほど、内容や発生頻度を記録しておきましょう。記録があれば、第3者の視点で事実を整理しやすくなり、的確な判断につながるからです。
カスハラと正当なクレームの境界線をより具体的に知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

Q5 現場で使える対策ツールはある?
現場でカスハラ対応をスムーズに進めるためには、証拠を残し、社内共有を効率化できるツールが役立ちます。
具体的には以下のツールです。
- 防止ポスターや注意喚起のサイン
- 防犯カメラ
- 電話内容の録音、自動文字起こし
- 顧客への回答補助表示、自動応答 など
たとえば、電話対応でのカスハラ対策には、証拠として録音データを残すことが重要です。とはいえ、電話のたびに録音ボタンを押すとなると、従業員の負担や録音漏れのリスクが避けられません。
そこで、自動録音機能付きのシステムを導入すれば、確実に内容を記録できます。さらに、通話内容のデータ化しておけば、後からの事実確認が容易になり「言った言わない」のトラブルも防げます。
自動録音機能が付いている「カイクラ」の詳細は以下よりご覧ください。
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こうした物理的なツールとあわせて、従業員への研修をおこない、対策を強化しましょう。
まとめ:東京都カスハラ防止条例への対応は早めに備えよう
東京都をはじめ、全国で広がりつつあるカスハラ防止条例は、現場での具体的な対応を企業に求めています。
企業に求められる義務は、従業員の心身の安全を守る「安全配慮義務」と、カスハラ対応に必要な「体制整備義務」の2つです。企業がこの義務を放置すると、離職・企業イメージ低下・法的トラブルなどの深刻なリスクを招きます。
本記事で紹介した実践的な対策を組みあわせて、「カスハラは許さない」という企業姿勢を社内外に示し、従業員が安心して働ける環境を作りましょう。
電話でのカスハラ対策には、自動録音ツールがおすすめです。
「カイクラ」であれば、録音はもちろんのこと、顧客の対応履歴が一元管理できるので、顧客を待たせないスムーズな対応ができ新たなクレーム発生を防止できます。クレームや通常の電話対応にも活用できるカイクラの詳細は、以下からご覧ください。
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