【事例に学ぶ】カスハラ対応の義務化で企業がすべきこととは?対策の進める5つの方法

「企業のカスハラ対策が義務化……どこから対応したら?」

昨今、ニュースなどで話題にも上がっているカスタマーハラスメント(カスハラ)。従業員の離職や生産性の低下、また社会的な企業イメージにも悪影響を与える深刻な課題です。

これまで「努力義務」だったカスハラ対策は、法改正により「義務事項」になりました。しかし、実際何をどのように進めればよいのかわからない方もいるのではないでしょうか?

本記事では、企業が取り組むべきカスハラ対応の基本方針や実践方法を解説します。また、すでにカスハラ対策を明示している企業の事例を6つ紹介します。ぜひ参考にしてください。

電話対応において「従業員を守りながら対応品質を高めたい」場合におすすめなのが、顧客とのやりとりを可視化し、情報共有を効率化できるツールの導入です。

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目次

カスハラ対策が義務化!企業を巡る顧客対応の事情

2025年6月、企業にカスハラ対策を義務づける法改正が国会で成立しました。これは「労働施策総合推進法」の関連法に基づくもので、2026年4月から防止措置が義務化されます。

厚生労働省によると、カスハラは以下のように定義されます。

顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」

参考:カスタマーハラスメント対策リーフレット

カスハラとみなされる言動は、暴言、脅迫、長時間の拘束、SNSでの誹謗中傷、従業員への個人攻撃、ストーカー行為などさまざまです。これらは、従業員が安全で快適に働ける職場環境を損なう事態を招きます。

実際、厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」によると、約9割の企業でカスハラが発生しているという調査もあり、今回の法改正に至りました。

カスハラ法制化の関する詳細は、以下の記事もあわせてご一読ください。

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企業がカスハラ対応を進める5つの方法

企業の規模や業種にかかわらず、カスハラ対策は経営陣から現場の従業員まで一丸となって進める必要があります。

具体的な方法として以下の5つを紹介します。

  1. 基本方針とガイドラインを策定、周知する
  2. 事実確認の方法、外部との連携フローを明確にする
  3. 従業員に向けた相談窓口を設置する
  4. 対応マニュアルの作成と教育を実施する
  5. 対応記録とデータを活用し、再発防止策を練る

ぜひ参考にしてください。

1.カスハラ対応の基本方針を策定、周知する

まず、カスハラに対する企業姿勢を「基本方針」として明文化します。「どのような行為をカスハラとみなし、どのように対応するか」を方針として明確にすることです。

基本方針に盛り込むべき基本的内容は以下のとおりです。

  • 顧客との健全な関係構築を重視する
  • 従業員の安全と尊厳を守る
  • 不当な要求には毅然と対応する

厚生労働省の資料を参考にすると、企業が守るべき原則がわかります。

参考:ハラスメント対策・女性活躍推進 に関する改正ポイントのご案内

そのうえで、トップメッセージとして社内外に発信し、広めることが重要です。自社の方針を理解し、全社員がカスハラに対する共通認識を持てるようになります。

基本方針の詳しい内容や事例は下記の記事で紹介しているので、ぜひご一読ください。

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2.事実確認方法、外部連携フローを明確にする

次に、カスハラが起きた際の事実確認の方法や外部との連携フローも決めておきます。

具体的には以下のとおりです。

  • 現場スタッフ複数名で事実確認をする
  • 通話・接客履歴などの記録を確認する
  • 警察・弁護士との連携基準(暴力・脅迫など)を設ける

たとえば現場の複数人にヒアリングをしたり、通話録音やテキストのやりとり履歴を確認したりすれば、事実確認がスムーズです。

また、暴力や脅迫があった場合は警察、法的リスクがある場合は弁護士に相談するなどのアクションを取りやすくなります。

3.従業員に向けた相談窓口を設置する

続いて、カスハラ対応では従業員が安心して声を上げられる環境作りも欠かせません。

現場では「お客様に申し訳ない」「自分の対応が悪かったのでは?」と抱え込んで我慢してしまい、カスハラ報告が遅れる従業員もいます。

そのような状況を防ぐには、社内に相談窓口を設けておくことが重要です。社内で収拾が難しいケースでは、外部の専門相談窓口や産業医による相談なども提示します。

とくに被害者の精神的負担が深刻な場合、一時的に業務から離れてもらうなどの配慮も必要です。その判断基準も明確にしておきましょう。

なお、以下の記事ではカスハラ相談窓口の設置について解説していますので、ぜひご参照ください。

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4.対応マニュアルの作成と教育を実施する

続いて、基本方針を現場が実践できるように対応マニュアルを整備し、研修を実施します。

対応マニュアルには以下の内容を組み入れてください。

  • 自社の基本姿勢とガイドライン
  • 現場での初期対応
  • 報告方法や対応フロー

また、カスハラが悪化した場合に踏むステップも忘れてはなりません。たとえば「どの段階でカスハラとみなすか」「どの状況で上司や担当者に報告すべきか」「どのような言動を危険なサインとみなすか」などです。

そして、対応マニュアルをもとにロールプレイング研修などの教育を実施します。想定したシーンでの対応を実際に取り組むことで、実践的なスキルを身につけられるためです。

以下の記事では、方針・ガイドラインを実践的な対応マニュアルに反映させるポイントにふれています。ぜひ参考にしてください。

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5.対応記録とデータを活用し、再発防止策を練る

最後に、カスハラの再発防止に向けた対応記録とデータ活用の方針を決めます。

たとえば、「カスハラが特定の曜日や時間に集中していないか?」「特定の商品やサービスに偏っていないか?」などの傾向から、人材の配置や顧客対応方針を見直し、再発防止につなげることが可能です。

対応記録には「いつ」「誰が」「誰から」「どのような内容で」「どう対応したか」があり、そのデータを解析します。

そして発生したカスハラの原因を突き詰め、対応マニュアルや教育内容の見直しに活かすことが再発を防ぐポイントです。

カスハラ対応の参考に!企業の取り組み事例6選

前章ではカスハラ対応の方法をみてきましたが、なかにはすでにカスハラ対応を実践している企業があります。本章では、業界別に取り組み例を6つ紹介します。

  1. 日本航空株式会社
  2. フリー株式会社
  3. スターバックスコーヒージャパン株式会社
  4. 医療法人綾和会 浜松南病院
  5. 埼玉トヨタ自動車株式会社
  6. 住友不動産株式会社

カスハラ対策に取り組む際には、好事例から学ぶのも有効です。ぜひ参考にしてください。

1.カスハラ防止策と通報制度を整備|日本航空株式会社

航空業界からは、日本航空株式会社の事例を紹介します。同社は「世界一のサービス品質と安心して働ける職場環境の両立」を掲げ、カスハラ対策方針を策定しました。分科会を組織し、自社の対応方針を構築したそうです。

同社ではまず、対応マニュアルや現場の判断基準を社外の専門家とも協議して作成し、社内に相談窓口を設置することで従業員を守る体制を固めました。

たとえば、顧客から無理のある言動や要求があった場合、まず現場の複数人で状況判断し、その場で解決を目指します。それでも改善が見られないときは、本社の担当部門と連携し、次の対応を検討し、解決しない場合は書面で正式な通知をおこなうこともあるそうです。

また、顧客対応をおこなう約2万人がe-ラーニングで研修を受けるなど、教育にも余念がありません。

参考:世界一のサービス品質と安心して働ける職場環境の両立を目指して

2.NOカスハラ宣言を社内外に告知|フリー株式会社

IT・サービス業界からはフリー株式会社の事例を紹介します。同社は、社員が安心して働けるサービス企業として、「NOカスタマーハラスメント宣言」を打ち出し、社内文化の転換を図っています。

具体的には従業員がクレーム対応に追われず、過剰要求を拒否できる明確なルール・ガイドラインの策定と周知です。宣言だけではなく、相談窓口の設置・被害者支援策の整備を並行させることで、「言いづらい」「我慢するしかない」という空気を変える狙いがあります。

このような姿勢は、IT・サービス業という業界背景も踏まえ、「テキストベース/遠隔対応が多い」環境において特有のリスクにも備えたものであるといえるでしょう。

参考:カスタマーハラスメントへの取組により従業員の安心感を獲得!

3.人を大切にする職場文化を反映|スターバックスコーヒージャパン株式会社

飲食・サービス業界からは、スターバックスコーヒージャパン株式会社の事例を紹介します。同社は、2025年4月に「カスタマーハラスメント対応方針」を策定し、従業員(パートナー)の安全と尊厳を企業として守る宣言をしました。

店舗で働く従業員個人ではなく、組織的に対応する旨を明記し、企業が一丸となってカスハラに対応するとしています。

また、SNSでの従業員情報の公開や差別的言動、長時間の執拗なクレームなどのカスハラに該当する行為を具体的に列挙し、毅然とした態度で対処するそうです。

複数人で注意喚起しながらも、解決が難しい場合は警察への相談や通報、入店のお断りなど、状況に応じた対応をします。カフェという顧客との接点が直接的になりやすい環境で、従業員を守る姿勢を明確にした点が印象的です。

参考:スターバックス コーヒー ジャパン カスタマーハラスメント対応方針について

4.医療現場特有の対応マニュアルを整備|医療法人綾和会 浜松南病院

医療機関からは、浜松南病院のカスハラ対策事例を紹介します。静岡県浜松市にある同病院では、カスハラと同義である「ペイシェントハラスメント」への指針をホームページに公表しました。患者・家族による不当要求・暴言などの行為を指しています。

カスハラにあたる行為として、身体的・精神的攻撃や威圧的言動、居座りや謝罪要求などを具体的に示しました。そして職員の安全確保を最優先に、「毅然とした対応」を取ることを宣言しています。

被害を受けた職員には相談窓口を案内し、場合によっては警察や弁護士との連携も視野に入れた対応フローも明示しました。医療の現場における「患者対応」と「職員保護」を同時に実現する工夫がうかがえます。

参考:当院におけるペイシェントハラスメントに対する指針

5.教育と相談体制で現場を支援|埼玉トヨタ自動車株式会社

自動車業界からは、埼玉トヨタ自動車株式会社の事例を紹介します。埼玉県の自動車ディーラーである同社は、厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」をもとに、自社の対応方針を公表しています。

カスハラ行為として暴言、威圧、過剰要求、SNSによる誹謗中傷、時間的拘束などを具体的に定義し、問題が起きた際には方針に従って対応する旨を示しました。

そして従業員が安心して働ける環境作りのために、従業員に向けたカスハラ研修、相談窓口、外部機関との連携体制を整備することに注力しています。

「顧客対応においても従業員の尊厳を守る」という観点から、サービスの現場だからこその実践的な仕組みが特徴です。

参考:カスハラ基本方針 | 埼玉トヨタ

6.社外に向けた明確なルールを公開|住友不動産株式会社

不動産業界からは、住友不動産株式会社の事例を紹介します。同社では、カスタマーハラスメントに対する基本方針を社外に公開し、顧客にも「言動が許容範囲を超えれば対応を制限する」ことを明示しています。

具体的には、「従業員保護」「迅速適切な対応」「相談窓口の設置」「研修の実施」などの取り組みを示すことで、透明性を持った企業ルールを提示しました。

顧客との接点が多い不動産業界において、従業員を守るための「ルール化と公開」によって、ハラスメント事案の抑止力を構築している点が参考になります。

参考:カスタマーハラスメントに対する基本方針|住友不動産

企業の顧客対応において今一度確認すべきこと2つ

企業事例からカスハラ対策の取り組みをみてきましたが、重要なのは自社の状況にあわせることです。

ここでは、顧客対応においてとくに確認しておきたい2つの視点をみてみましょう。

  1. 従業員を守る体制を構築できているか
  2. 顧客対応における情報共有に問題はないか

ぜひ参考にしてください。

1.従業員を守る体制を構築できているか

1つ目はカスハラが発生した際に、組織として従業員を守れる体制ができているかです。

明確な基本方針があっても、カスハラが完全になくなることはありません。そのため、顧客対応をする現場の従業員を確実に守れる体制作りが必須です。

具体的には、方針を社内に広める際に「何をしたら上司に報告できるのか」「どのラインを越えたら顧客対応をやめてよいのか」までの明確な指針を明文化します。

また、ケース別に対応マニュアルを整備し、ロールプレイ研修やシミュレーションをおこなって咄嗟の判断力を養うことも有効です。

経営陣などの上層部でカスハラ対応の基本方針を決めても、実際に顧客対応するのは現場です。従業員が困らないよう、きめ細かくフォローできるようにしましょう。

2.顧客対応における情報共有に問題はないか

2つ目は、顧客対応の記録などの情報の共有を問題なくできるかです。カスハラ対応では、情報の記録と共有も重要です。

通話内容の履歴など客観的な情報がないと、カスハラ事案を確認するとき担当者が伝聞でしか状況を把握できません。その結果、誤解や対応の遅れにつながることがあります。

この問題の解決策として、通話履歴を自動で記録・共有できるツールの導入があります。客観的な記録があれば、誰が後を引き継いでも同じ情報を確認でき、一貫した顧客対応が可能になるからです。

たとえば電話対応を可視化できる「カイクラ」は、カスハラ発生時の事実確認や再発防止にも役立つツールです。

「言った言わない問題」や「論点のすり替え」などの問題にも、通話録音データと文字おこし、AIによる通話内容の要約データをもとに適切に対処することが可能です。詳しくは以下よりご覧ください。

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さらに、近年はAIが通話内容を自動で解析し、ハラスメント傾向を検知することも可能です。カスハラ対応のAI活用については、以下の記事も参考にしてみてください。

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まとめ:企業義務を果たすためにもカスハラ対応を体系化!

法改正により、カスハラ問題を念頭においた顧客対応が企業義務になりました。それまで明確なガイドラインや対応マニュアルがなかった企業も、取り組まなければなりません。

その過程は時間がかかりますが、取り組みそのものは顧客や従業員にとってプラスに働くといえます。対応方針が明確になることで職場環境が守られ、顧客側は企業の方針を認知し、言動に気をつける効果が期待できるからです。

今回紹介した5つの方法を参考に、カスハラ対応に取り組んでみてください。カスハラ対策の実務をより詳しく知りたい方向けに、資料をご用意しました。無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

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  • カスタマーハラスメント防止をめぐる世の中の動き
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  • 対策に必要な対応実務(社内運用のポイント)

カイクラ 佐貫
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この記事を書いた人

カイクラ編集部です。カイクラ.magは、株式会社シンカが運営するオウンドメディアです。 「音声を記録し、会話を企業価値に」をモットーに、「会話」に関する様々なテクノロジーや最新情報、企業の業務効率化や社内コミュニケーションの活性化事例など、すべての企業にとってお役に立てる情報を幅広く発信します。

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