電話で顧客対応をしていると、暴言などのいわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」にあうことがあります。
建設的な会話ができずに電話を切りたいと思っても、簡単に切ることはできない場合も少なくありません。30分、1時間と続くこともあり、精神的なストレスとなっている方もいるのではないでしょうか?
そこで本記事では、カスハラ電話を切る手順とその際に避けるべきNG行為を紹介します。
カスハラ電話への対応は、個人のスキルだけに頼るのではなく、企業全体でガイドラインを設けてマニュアル化することが重要です。
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▲従業員と企業を守るための具体的な対策を解説
早急に切るべき!カスハラ電話の見極め方
カスハラ電話といえば、怒声を浴びせたり電話対応者に対して個人攻撃をするような事例を連想しがちです。このような電話もカスハラですが、他にもカスハラと判断できる場合があります。
カスハラ電話と判断される電話の基準は、主に以下の内容を含む通話です。
▼カスハラに該当する電話の例
- 要求内容に正当性がなく、無理な要求をする
- 同じ要求で何度も電話をする
- 30分以上同じ要求を繰り返す
- 罵倒・脅迫・個人攻撃・威圧的な発言をする
- 対応者のプライベートについて何度も質問してくる
これらによって従業員は業務時間を取られ、精神的に疲弊してしまいます。
言葉の暴力はなくても「何度説明しても顧客が納得せず、電話を切らせてくれない」「回答済みでも顧客が同じ用件で何度も電話をかけて同じ話をする」などの行為もカスハラに該当します。
一方、カスハラとよく比較されるのがクレームです。クレームは、顧客側が商品やサービスの改善や不具合があった場合に、改善や対応を要求する正当な行為です。
ただし、度を過ぎた補償や規定にない特別待遇、商品・サービスとは無関係の要求をするようになると、カスハラに当てはまることがあります。
カスハラとクレームの違いを詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご参照ください。

【例文付き】カスハラ電話を切るまでの5ステップ
従業員を消耗させるカスハラ電話は迅速に切るべきといえますが、顧客の言動を悪化させる可能性もあるため、慎重に進めなければなりません。
本章では、カスハラ電話を切るためのステップを紹介します。
- 相手の要求を把握する
- 要求に対する回答をする
- 相手の不適切な言動を指摘する
- 電話を切ることを伝える
- 毅然とした態度で電話を切る
例文もあわせて紹介しますので、ぜひ実際のカスハラ電話対策にお役立てください。
1.相手の要求を把握する
まず相手の要求内容を把握し、その妥当性を判断します。最初からカスハラ行為をする顧客はほとんどおらず、大抵はきっかけがあるからです。
一般社団法人日本コンタクトセンター協会「コールセンターにおけるカスタマーハラスメントに関するアンケート調査」によると、顧客がカスハラをする目的として「鬱憤を晴らしたい」「対応が気に入らないから、謝罪をして欲しい」がある一方、「自分の正当性を伝えて、要求を通したい」という声もありました。
このことから、要求の内容が当然かどうかを押さえたうえでカスハラ判定をする必要があるでしょう。
このときに使える例文は以下のとおりです。
▼相手の要求を把握する例文
「ご不便をおかけして申し訳ございません。○○をご希望ですね。確認いたしますので、少々お待ちいただけますでしょうか?」
「ご迷惑をおかけして申し訳ございません。○○ということでございますね。確認しまして、こちらからご連絡を差し上げてもよろしいでしょうか?」
また、クレームをカスハラに発展させないためにも、電話対応した従業員が1人で判断せず、社内に相談しながら慎重に進めることも大切です。
2.要求に対する回答をする
要求内容を確認したら回答をします。このとき相手の主張に一理あると判断できた場合は、クレーム対応として処理してください。
クレーム対応のノウハウは、詳しく解説した以下の記事もぜひご一読ください。

カスハラに発展しそうなクレームでも、相手とコミュニケーションがとれる場合は円満に解決に導くことが重要です。
ただし、話しても建設的な解決が難しい場合は、自社の立場として相手の要求が通らない旨を伝えなければなりません。
その際に役立つ例文は以下のとおりです。
▼要求に応えられない旨を伝える例文
「誠に申し訳ございませんが、そのようなご要望にはお応えできかねます」
「対応が至らず申し訳ありません。○○は規約にございませんのでご要望にはお応えできかねます」
3.相手の不適切な言動を指摘する
顧客の要求がクレームの範囲に収まらず、解決の糸口がみつからない場合は、電話を切るためのステップに入ります。その第一歩が、相手の不適切な言動を指摘することです。
電話で話しても納得してもらえず、対応者の名誉を傷つけるような発言をする顧客に対しては、不適切な言動を指摘して改めるように依頼しましょう。
▼相手の不適切な言動を指摘する例文
「申し訳ございませんが、お言葉が過ぎますので、このままでは対応を続けることができません。冷静にお話しいただけますでしょうか」
「お気持ちはお察ししますが、暴言については対応が厳しく存じます。落ち着いてお話しください」
指摘に加えて、以下のように電話を切ることを予告することも効果的です。
4.電話を切ることを伝える
言動を指摘しても顧客の態度が変わらない場合は、予告としてではなく、以下のようにすぐに電話を切ることを通告します。
▼電話を切ることを伝える例文
「申し訳ございませんが、○○様のお言葉が厳しく、適切な対応が難しい状況ですので、お電話を切らせていただきます。」
「恐れ入りますが、お話ができない状況が続いておりますので、通話を終了させていただきます。」
ただし受話器を置く際には「失礼いたします」と付け加え、最後まで礼儀正しくふるまうようにしましょう。
5.毅然とした態度で電話を切る
電話を切ることを通告した後で相手が感情的になったり、罵声がさらに続いたりした場合は、社内の電話対応マニュアルに従い、毅然とした態度で電話を切ります。
この時点では会話は不可能ですので、相手の反応を待つ必要はありません。以下のように一言伝えたうえで、受話器を置いてください。
▼毅然とした態度で電話を切る例文
「申し訳ありませんが、対応することはできません。失礼いたします。」
「弊社としては、これ以上応じられません。失礼いたします。」
電話を切った後は、すぐに上長へ報告したり、対応内容を記録に残したりして、カスハラ案件として社内の規定に従って対処しましょう。
なお「社内マニュアルがない」「カスハラ対応規定はあるが見直しをしたい」場合に、カスハラ対策のヒントになる情報を詰め込んだ資料をご用意しました。
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▲従業員と企業を守るための具体的な対策を解説
カスハラ電話を切るためにしてはならないこと3つ
カスハラ電話を切るまでの5ステップをみてきましたが、実際の電話対応では慌ててしまい、うまくいかないことが多々あります。
そうした焦りから無意識にとってしまう行動が、問題をさらに長引かせる原因になっていることが少なくありません。
そこで本章では、カスハラ電話を切るために避けるべきNG行動を紹介します。
- 曖昧な謝罪を繰り返す
- 仮定の話題に乗る
- 感情的になる
ぜひ参考にしてください。
1.曖昧な謝罪を繰り返す
まず、謝ることは怒った相手の気持ちを静める方法ですが、原因がはっきりしないまま謝罪を繰り返すのは避けてください。非を認めたと判断され、要求がエスカレートする可能性があるからです。
たとえば、「お客様、○○に関して誠に申し訳ございません。」などと言うと、なぜ謝罪をするのか明確にしていないため、相手に追及する隙を与えてしまうことがあります。
このような事態にならないよう、以下のように謝罪します。
▼カスハラ電話での謝罪例文
「誤解を与えてしまい、申し訳ございません。」
「○○の説明が足りず、ご迷惑をおかけしてしまいました。誠に申し訳ありません。」
どちらも、相手を不快な気持ちにしたことを謝罪しているのがポイントです。
2.仮定の話題に乗る
次に、顧客からの仮定の話題に乗ることも避けるべきです。
カスハラ行為をする顧客は、本題からずれて仮定の話を始めることがあります。その際に「もし○○だったらお前はどうするんだ?」「○○になったら、どう責任を取るんだ?」などと言われても、「お応えいたしかねます」を貫くことが大切です。
覚えておくとよい例文はこちらです。
▼仮定の話題に応えないための例文
「お気持ちはお察ししますが、仮定の質問に答えることはできません。○○(本題)に関しては~(解決策を提示)。」
仮に言い返したくなっても本題と要求の本質だけに集中し、不必要な発言をしないように心がけてください。電話対応した1人の個人的な発言が増えると、次の罵倒や個人攻撃を招く可能性があるからです。
3.感情的になる
続いて、感情的になることも避けなければなりません。
しかし実際に電話で罵声を浴びると、精神的なダメージが大きいものです。ショックを受けたり、慌てたりしてしまい、声に気持ちが出てしまうと、さらに攻撃される可能性があります。
なかなか冷静に対応できない場合は一度電話を保留にし、深呼吸をしてみてください。一歩ひいた目線で落ち着きを取り戻すことが重要です。
相手が個人的な意見を求めてくることもありますが、以下のように伝えて回答を控えてください。
▼個人的な回答を避けるための例文
「お答えする立場ではありませんので、お答えいたしかねます。」
「申し訳ございませんが、回答を控えさせていただきます。」
ただし、相手の追及が厳しく冷静に対応できない場合は「これ以上対応することはできません。失礼いたします。」と切るか、上長に電話を代わってもらうのも良策です。
ここまでカスハラ電話対策ですべきこととNG行動を紹介してきましたが、カスハラ電話は従業員だけで対処できる問題ではありません。電話に出た人によって対応が変わると企業として統制がとれず、返って問題が大きくなるリスクがあるからです。
ガイドラインを設けて企業全体で取り組む姿勢が求められます。そこで、次に企業がすべきことを具体的にみてみましょう。
カスハラ電話から従業員を守る!企業がすべきこと4つ
カスハラ電話対応は、新入社員や電話経験の浅い従業員にとって精神的な負担になりがちな難易度の高い業務です。
従業員を守るために、企業がすべきことを紹介します。
- 切電マニュアルを作成する
- 従業員にカスハラ対応研修をおこなう
- 社内に相談部署を設け、外部の機関とも連携する
- 通話録音を徹底し、状況を記録する
ぜひ参考にしてください。
1.切電マニュアルを作成する
まずカスハラ電話を切るためのマニュアルを整備し、電話の負担を減らすことです。カスハラ電話では、対応者が電話を切れずに長時間拘束されてしまうケースが多く、精神的なストレスだけではなく、業務にも支障をきたします。
そこで、まだ社内のガイドラインがない場合は早急に制定し、それに基づく電話を切るための「切電マニュアル」を完備することが先決です。

2.従業員にカスハラ対応研修をおこなう
切電マニュアルを整備したら、状況別に対処法を決めて研修を行います。まず、自社の電話業務でよくある問い合わせ例や過去にあったカスハラ事例を取り入れ、対応フローを明確にしてみてください。
たとえば、クレームやカスハラ事案の電話を受けた場合、電話スキルが足りない新入社員は確認する旨を伝えて保留にし、上司に対応を相談したり、電話を代わってもらったりするフローを決めることです。
また、カスハラ電話でよくある長電話では自社の方針を伝え、切ることも明記します。そして、明確化された対処法を研修にも取り入れましょう。トークスクリプトを作成し、カスハラ対応をロールプレイしてもらうことで、実際の電話対応で活かしやすくなります。
3.社内に相談部署を設け、外部の機関とも連携する
カスハラ対応教育をする一方、会社は社内にカスハラ相談ができる部署を設け、カスハラ被害にあった従業員をサポートする体制を整えます。このとき、自社で対応しきれない顧客に対しては、専門機関と連携することも検討してください。
専門機関とは、弁護士と警察です。企業として対応が困難なケースでは、弁護士を代理人として法的な交渉を依頼できます。
警察は、カスハラ電話が社会的に度を超えた場合に支援を要請します。顧客の行為が暴行や脅迫、ストーカーなどとして認められる場合に通報し、保護を求めることが可能です。
なお、専門機関と連携するには、カスハラ電話の回数や日時、通話記録などの提出が必須です。日ごろから、通話録音を始めとした電話の記録を収集しておきましょう。
4.通話録音を徹底し、状況を記録する
前述のとおり、企業は通話録音を徹底し、状況を記録することが大切です。被害状況の把握や外部機関と連携する際の客観的な証拠になるからです。
通話が録音されることを顧客に伝えられるため、暴言などの抑止力にもなりますが、どのような方法で通話録音を徹底すればよいのでしょうか?
電話業務が負担になっている場合、システム導入を検討するのもおすすめです。昨今では、自動の通話録音や要注意顧客リストを通話記録と紐づけられるツールもあります。次にその一例をみてみましょう。
カスハラ電話対策を支援する「カイクラ」
カイクラは、コールセンターなどで利用されているCTI技術(Computer Telephony Integration)を活用したコミュニケーションプラットフォームです。
電話の受架電はすべて録音され、顧客情報のある顧客との通話はポップアップ表示されるので確認しながら顧客対応ができます。また、電話と顧客情報を連携され、それまでのやりとり記録を把握できるので、用件の経過や対応者まで視覚的に把握可能です。
カイクラがカスハラ電話対策を支援するポイントは以下の3つです。
- 自動で通話録音されるため、重要な会話を漏れなく記録できる
- やりとり履歴が見える化されるため、状況を素早く把握できる
- 顧客タグ付け機能で、要注意顧客の対応に注意できる
ほかにも、通話の自動文字起こし機能もあるため、カスハラ事案発生時に音源をさかのぼって聞き返す手間が省けます。
もちろん、ツールの活用はカスハラ電話そのものを防止することはできません。しかし、カスハラが発生した際に客観的な事実をもとに状況確認をおこなうことが可能です。
社内のカスハラ対応ガイドラインに従って迅速に対処する際に役立つでしょう。
ただし、またガイドラインそのものがない企業もあります。そのような場合に役立つ資料「従業員を守るカスタマーハラスメント対策」をご用意しました。
社会保険労務士監修のもと役立つ内容を盛り込んでいます。カイクラにできることもあわせて解説していますのでぜひ参考にしてください。
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▲従業員と企業を守るための具体的な対策を解説
まとめ:カスハラ電話対応は記録を残すことから!
カスハラ電話は、従業員の精神的・時間的な負担となりやすい問題です。しかしながら、企業がガイドラインと対応マニュアルを構築し、研修を通して対処法を浸透させることで改善が期待できます。
そのほかにも、社内にカスハラ問題を担当する部署を設けるなど、積極的に取り組みましょう。
一方でツールを活用することも有用です。カスハラの記録を漏れなく残しておけば、重大な問題に発展した際に弁護士や警察と相談する際の資料として活用できるからです。
ツールの活用に興味をお持ちの方は、ぜひカイクラをご検討ください。ツールを活用したカスハラ対策については、以下よりお気軽にご確認ください。
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▲従業員と企業を守るための具体的な対策を解説