「中小企業もDXに取り組むべきだろうか」
と感じている方。
結論からお伝えすると、中小企業こそDXに取り組むべきです。なぜならDXによって業務の効率化や自動化、生産性アップなどが期待できるから。さらには顧客満足度や売上アップにもつながります。
とはいえ、なぜ中小企業にDXが必要なのかは、なかなかわかりにくいですよね。
そこで今回は、
- DXの未導入によって、多くの企業が「2025年の崖」に直面する
- 中小企業にDXの推進が必要な理由
- DXを推進した企業の成功事例
- 中小企業がDXに取り組むうえで必要な準備
を紹介します。
まずは経済産業省が想定している「2025年の崖」について、ざっくりと理解しましょう!
DXの未導入によって、多くの企業が「2025年の崖」に直面する
最初にDXの未導入によるリスクについて、
- 経済産業省の「2025年の崖」
- 未導入によるトラブル
の観点から紹介します。
データは以下を参考にしているため、気になる方はあわせてご確認ください。
出典:経済産業省「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf
経済産業省が提唱する「2025年の崖」とは
経済産業省はDXに取り組まなかった場合、以下のリスクを想定しています。
- 既存システムの過剰なカスタマイズによってデータを活用できない
- IT人材が約43万人不足、かつ古いシステムを理解できる人材も少ない
- 古いシステムの維持・管理費が高額で、IT予算の9割を占めてしまう
上記の課題が発生した結果、2025年以降に最大12兆円の経済損失が発生すると予測。これを「2025年の崖」と呼んでいます。
2025年の崖による経済損失を防ぐために、経済産業省などが中心となってDXを推進しています。
中小企業におけるDXの現状:推進しているのは36.5%
積極的にDX化に取り組んでいる中小企業は、まだまだ少ないのが現状です。
実際に日経BPの調査によると、DXを積極的に推進しているのは36.5%でした。
企業の規模別に見ると、以下の通り。
【企業規模別に見るDXの推進状況】
- 300人未満:21.8%
- 300〜1,000人未満:34.4%
- 1,000人以上:57.2%
- 5,000人以上:80.3%
また取り組みへの意欲と成果について、以下の結果が明らかになっています。
【DXへの意欲と成果】
- 本気で取り組み、目覚ましい成果をあげている:25.1%
- 本気で取り組み、一定の成果をあげている:25.1%
- 本気で取り組んでいるが、まだ成果をあげていない:39.4%
- PoC(概念検証)という位置づけである:33.9%
取り組んでいるものの、「成果をあげるのが難しい」と感じている企業が多いです。
出典:日経BP「日経BP総研、国内900社の「デジタル化実態調査」を発表デジタルトランスフォーメーションの推進企業は36.5%、企業規模で大きな差」
https://www.nikkeibp.co.jp/atcl/newsrelease/corp/20191125/
中小企業のDXに対する取り組みや実態について、詳しくは「中小企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)における実態と課題とは?解決策もあわせて紹介」をご一読ください。
ここまで中小企業とDXの関係について解説しました。
まだまだ取り組んでいる企業は少ないですが、DXは中小企業こそ必要です。その理由を次で詳しくお伝えしますね。
中小企業にDXの推進が必要な理由
ここからは、中小企業にDXが必要な理由として、
- 業務プロセスの自動化によって効率化を実現できる
- 災害などイレギュラーでも事業を継続しやすい
- 未来のリスクを予測し、トラブルを防止できる
の3つを解説します。
理由1:一部の業務プロセスを自動化でき、効率化につながる
1つ目は「一部の業務プロセスを自動化でき、効率化につながる」です。
DXは例えば、以下のような身近な業務に適用できます。
- 売上入力を手書きから自動計算システムに変更
- 顧客管理システムを導入し、自動でメールマガジンを配信
一部の業務を自動化することで時間に余裕ができ、コア業務に多くの時間をかけることが可能です。
理由2:災害時などイレギュラーが起きても事業を存続できる
2つ目は「災害時などイレギュラーが起きても事業を存続できる」です。
2020年は新型コロナの影響でテレワークを導入するなど、事業の取り組み方が変化した企業は多いのではないでしょうか。また地震など災害によって、事業の存続が難しくなる可能性もあります。
DXに取り組んでいると、イレギュラーが発生しても事業を継続しやすくなります。
例えば、クラウド上でデータを保管できる顧客管理システム。IDとパスワードがあればブラウザからアクセスできるため、自宅からでも顧客情報を閲覧できます。
テレワークの導入などもスムーズになり、イレギュラーが起きても通常通りの対応が可能です。
理由3:未来のリスクを予測し、トラブルを防止できる
3つ目は「未来のリスクを予測し、トラブルを防止できる」です。
製造業などは機械を使用することが多いですが、故障のタイミングなどはなかなか予測できません。急な故障で納期に遅れることは、避けたいはずです。
実はDXによって、故障時期を予測できます。
例えばIoTでは、機械のデータを集めてAI分析をかけることで、小さな機械の変化を察知。予測をもとに早めに修理に出すことで、作業が止まることはありません。
リソースが限られている中小企業だからこそ、DXを活用してトラブルを防ぐことが重要です。
DXを推進した企業の成功事例
続いては、中小企業がDXに取り組んだときをイメージしやすくするために、以下3つの成功事例を紹介します。
- 日進工業株式会社
- のぼり屋工房株式会社
- トヨタカローラ香川株式会社
事例1:日進工業株式会社
日進工業株式会社はDX化によって、稼働率アップに成功しています。
もともと日進工業株式会社は、日本のものづくりを存続させるために、DX化を検討していました。そこで製造ラインの稼働状況を見える化するために、MCM Systemを開発します。
モニターで稼働率や停止状況を把握できるようになり、生産性の低いラインの洗い出しに成功。稼働率を50%から90%まで引き上げました。
稼働率を正確に把握することで、受注できる数も的確に判断できるようになっています。
出典:akeruto「中小企業におけるDXの成功事例5選【従業員規模別に解説】」
https://akeruto.com/management/dx-case-study/
事例2:のぼり屋工房株式会社
のぼり屋工房株式会社は岡山県にある企業で、のぼり旗やのれんなど販促物を製造しています。DXによって、業務の自動化と効率化に成功しています。
DXに取り組むきっかけは、従業員の異動。1日5時間ほど受発注の管理を担当していた社員の異動が決まったものの、後任が見つかりません。
またICT分野による業務の自動化を考えていたこともあり、RPA製品である「WinActor」を導入しました。
RPAとは、人工知能などを活用してルーティーンワークを自動化できるもの。業務の効率化や生産性アップのために活用されることが多いです。
のぼり屋工房株式会社もWinActorによって、見積もりシステムのデータを自動で抽出。エラーは社員が確認しますが、それでも作業時間を1日2時間まで短縮しています。
出典:NTT DaTa「WinActor®導入事例【中小企業事例/のぼり屋工房株式会社】見積システムから基幹システムへのデータ引き継ぎをRPAに移植、従業員異動にともなう人手不足問題を解決」
https://winactor.com/case/winactoruse/5961/
事例3:トヨタカローラ香川株式会社
トヨタカローラ香川株式会社は電話対応にDXを取り入れることで、業務の効率化と生産性アップに成功しています。
トヨタカローラ香川株式会社は、店舗あてに5分に1回の電話を受けていました。また担当者が不在の場合、「誰がいつ電話をかけてきたのか」などの情報を他スタッフから受け継がなければなりません。
共有がスムーズに進まずお客さまに再確認する、不在のお客さまへのかけ直してもつながらないなどの課題を抱えていました。
そこで「カイクラ」を導入したところ、電話対応による時間のロスを大幅に削減しています。
具体的に役立った機能は、以下の2つ。
- 着信時に顧客情報を表示するポップアップ
- 伝言メモによる情報共有
ポップアップで顧客情報がわかることで、担当者に直接つなぐことが可能です。また伝言メモによって内容をしっかりと確認でき、お客さまをお待たせすることも少なくなりました。
出典:カイクラ「タイムロスが続いていた電話対応「カイクラ」導入後、すぐに時短効果が
担当者以外でも商談予定を組めるように」
https://kaiwa.cloud/case/022/
このようにDXに成功している中小企業も多いですが、導入にあたって準備も必要です。次で詳しくお伝えしますね。
中小企業がDXに取り組むうえで必要な準備
続いては、中小企業のDXにおいて必要な準備として、
- 目的の確認
- 予算の確保
- 対象ツールの確認
の3つを解説します。
準備1:DXに取り組む目的をハッキリさせる
まずはDXに取り組む目的を、社内でハッキリさせましょう。
経営陣がDX化を積極的に検討しても、活用するのは現場の社員です。DXを推進する目的やビジョンを共有しておかないと、ただ指示に従うだけで終わりかねません。
DX化によってどういう未来が得られるのか、しっかりと共有しておきましょう。
準備2:予算を確保する
DXに取り組むときは、予算をある程度確保しておくことが必要です。導入には数万〜数百万円かかるツールもあり、余裕のある計画が欠かせません。
予算の確保が難しい場合は、補助金を活用しましょう。種類にもよりますが、ツール導入費用の一部を負担してもらうことが可能です。
準備3:身近な業務で活用できそうなツールを探す
DXの導入は、まず身近な業務の改善から取り組むのがおすすめです。
その理由は「身近な業務の改善の方が取りかかりやすいうえに、業務の効率化など成果が見えやすいため」。
導入の成果を実感しやすいことから、電話対応など毎日の業務から見直すことをおすすめします。
またDXツールの中にも、中小企業向けに低予算で利用できるツールは数多くあります。
気になる方は、「【低予算でDX】中小企業におすすめのデジタルトランスフォーメーション(DX)サービスと成功事例」をご一読ください。
中小企業がDXに取り組むことで業務の効率化が実現しやすくなる
今回は、中小企業のDXへの取り組みについて解説しました。
おさらいすると、日本の中小企業でDXに取り組んでいる企業は少ないのが現状です。ただし経済産業省が提唱する「2025年の崖」のように、未導入のリスクも大きいです。
中小企業がDXに取り組むべき理由として、以下の3つを紹介しました。
- 業務プロセスの自動化によって効率化を実現できる
- 災害などイレギュラーでも事業を継続しやすい
- 未来のリスクを予測し、トラブルを防止できる
導入前に必要な準備は、以下の3つです。
- 目的の確認
- 予算の確保
- 対象ツールの確認
今回の記事を参考に、中小企業は身近な業務からDXに移行することを検討してみてください。