このところ大きな話題となっているテレワーク。テレビ報道などでは在宅勤務と同じ意味で使われているようですが、実は大きな違いがあります。
テレワークと在宅勤務の違いについて解説します。
テレワークとは?
ひとことにテレワークといってもその種類は様々です。在宅勤務はテレワークという働き方の一部でしかありません。
テレワークとは「本拠地のオフィスから離れた場所で、ICT(Information and Communication Technology )をつかって仕事をすること」であり、大きく分けて「在宅ワーク(在宅勤務)」「モバイルワーク(モバイル勤務)」「サテライトオフィス勤務」の3つに分けられるからです。
モバイルワークやサテライトオフィス勤務などの詳細については下記の記事をご覧ください。
在宅勤務とは?
在宅勤務とはその名称が示す通り出社せず、自宅を就業場所として業務を処理する働き方です。
その仕事内容は多岐に及んでおり、事務処理だけでなく顧客からの問い合わせやメール対応、電話対応だけでなく電話営業まで可能です。
ただし業務内容に応じた設備やICT機器が必要となります。
会社の窓口に送られたメールを安全に受信できるノートPC、Webカメラやヘッドセット、上司や同僚と即座にコンタクトがとれるチャットやWeb会議のコミュニケーションツールが代表的なものですが、業務内容によっては別途様々なシステムが必要とされます。
自宅から会社のサーバーにログインして作業をする場合はセキュリティ性の高いVPN回線を用意する必要がありますし、更にセキュリティ性を高めるために完全にクラウド化してシンクライアント(最低限の機能のみでデータが保存できないICT機器)を使うケースもあります。
また、在宅コールセンターや設計などの特別な業務を行う場合は専用のシステムが必要とされます。
設備が整っていなければ在宅勤務は不可能です。
業務内容
在宅勤務の業務内容は会社によって様々ですが、自社のビジネス領域と業務内容によって処理可能な仕事が決まります。
その中でも代表的なものは下記になります。
- データ入力
- CAD設計・WEBサイト作成などの専門業務
- 事務処理
- 資料作成
- 後輩への指導
- 電話対応
- 営業補助
- 社内手続き
- 各種決済
- WEB会議
- 在宅コールセンターなどの顧客対応業務
労働裁量制の場合は成果物の提出・納品が仕事となりますが、そうでない場合はオフィスで行っていた業務がそのままテレワーク化します。
そして電話対応や営業補助、WEB会議や決済などは社内ツールのテレワーク(モバイルワーク)対応が前提です。
また社内決済のため、書類にハンコを押しに出社するという報道もされましたが、これは旧来の制度がテレワーク化に対応していない事による弊害と思われます。
「テレワーク中に出社」4割 経理財務の在宅勤務阻む紙の壁|yahooニュース
ただし問題は自社の会社規約により見積書には上司の捺印が必要、というケースだけではありません。
クライアントの商習慣が紙ベースの場合、自社がデジタル化していても先方に合わせる必要があります。
以上の点からテレワークの実現は自社だけの問題ではないと言えるでしょう。
また新型コロナウイルス禍により、マネージャーが社内にいて在宅勤務のテレワーカーを管理するだけでなく、マネージャー自身も在宅勤務となるケースが増えています。
在宅で処理できる仕事内容は更に拡大していくでしょう。
なお、テレワークに向かない仕事については下記の記事で触れているので是非ご覧ください。
在宅勤務を成功させるコツ
在宅勤務を成功させるにはハンコ問題に代表される環境整備を整え、セキュリティを確保した上でデジタル化が大前提となります。こちらはテレワークのハード面だと言えるでしょう。
そしてソフト面からはマネージャーとテレワーカーの2つの視点に基づくマネジメントと働き方が重要となります。
在宅勤務のコツというと、テレワーカー側の視点で語られる事が多いですが会社全体として成功させるためには一丸となって取り組む必要があります。
そのため両者の視点を兼ね揃えておく事が在宅勤務を成功させる秘訣だと言えるでしょう。
テレワーカーを上手にマネジメントする方法
ソフトウェアやICT機器の準備、会社規約の整備は大前提として、テレワークを成功させるには何よりも信頼関係が重要です。
マネージャーとテレワーカーの間に信頼関係がなければ、管理ではなく監視を前提としたシステムを組むことになるからです。
総務省や厚生労働省の資料によれば、テレワーカーの管理方法は成果物だけで判断する労働裁量性にするか、始業・終業時にシステムにログインするといった事例が紹介されています。
毎日、始業開始時刻にテレビ会議ツールに同時にログインして仕事のリズムを作ったり、定期的に作業内容や進捗を確認するのが一般的な管理です。
このように事前に業務内容を明確化し、在宅勤務のルールを確立しましょう。
しかし、管理ではなく監視を選択する企業もあります。管理と監視は明らかに違うものです。監視された、と感じる状態では社員が高いモチベーションを維持する事は期待できません。
労働時間から時給換算の管理をしている企業が在宅勤務を導入した場合、必然的に成果ではなく勤務時間内にPCの前にいて作業をしているか、さぼっていないかチェックするという方向性に行きがちです。
実際、既に一部のテレワーカーから仕事量ではなく時間で管理されるプレッシャーを訴えるコメントが出ています。
いろんな会社でテレワークの流れがきてるけど、同時に常時カメラ付きのZOOM繋ぎっぱなしで監視するってとこが多くある
— ヒューマンアカデミー福岡校@フォロバ100% (@info_fukuoka) April 10, 2020
勤怠管理はわかるけど、プライベートの場を仕事に使ってるわけだから、ストレスマッハだよねw
もっと部下を、社員を信頼できないのかな、、、
結果で判断すればいいじゃん
テレワークって大企業なら離席監視されてるし操作ログも取られてるから実は普通に出勤するよりプレッシャーあるんですよね…家に居ながらにしてパソコンから離れられない()
— 不要不急のあおうさぎ🐇 (@ao_usagi) April 10, 2020
在宅勤務者のマネジメント方法は会社によって異なります。
一定時間ごとに電話をかけさせるといったものから、始業時間中はWEBカメラをONにしてサボっていないかマネージャーにチェックしてもらう、監視ソフトで画面の履歴やマウスの動きをモニタリングしたり、一定時間ごとに画面表示をキャプチャしたり、WEBカメラで撮影するというものもあるようです。
同様の管理方法は厚生労働省や総務省の資料で成功事例として紹介されていないこともあり、このような管理方法が適切で効果があるのか、まだ十分な結論が出ていないと言えるでしょう。
現在はテレワークを導入したばかりの企業も多いので、一種の過渡期における混乱かもしれません。
在宅勤務には通勤時間をゼロにできるメリットがありますが、仕事を管理ではなく監視されるようになるとプライベート空間と時間を会社が浸食してくるという問題があります。
お互いを信用しない前提で仕組み作りをすれば、監視ソフトウェアの導入など余分なコストがかかります。テレワークにしたメリットを経済的にも心理的にも台無しにしてしまうかもしれません。
テレワークを導入したほうがかえって窮屈になり、生産性が落ちた、むしろ出社したほうが仕事が捗るといった結果になれば、在宅勤務は失敗です。
マネージャーとテレワーカー、両者の信頼と同意に基づくマネジメントが必要となります
テレワーカーとして在宅勤務を成功させる方法
在宅勤務のテレワーカーとしてもっとも重要なのが生活リズムとモチベーションの維持です。
最初は出社せずに自由に働けるという期待をもって望みますが、実際はプライベート空間にひとりで仕事をする難しさを感じる人は多いです。
単位時間当たりの業務効率が落ちたり、ダラダラと仕事をしてしまい深夜や早朝にかけて作業をするようなケースは珍しくありません。
他律的なリズムがなければ生活が乱れやすくなります。
会社側が定時連絡やミーティングでリズムを作ってくれる場合はまだしも、テレワーカー任せのマネジメントを行っている場合は自己管理能力が試されます。
そこで在宅勤務を成功させるために仕事時間と仕事空間を峻別しましょう。
ベッドのある部屋やテレビのある部屋で仕事をしても捗りません。在宅勤務が決まったら仕事部屋を用意するとメリハリがつきます。
また仕事開始時間と就業時間を明確に決めましょう。会社側が時間を定めている場合はそれに従えばよいですが、完全労働裁量性だと成果だけで判断されるので放任されています。
そこで自分でルールを作る必要が生まれます。
こうして仕事場所と仕事時間を明確に定める事で業務効率をアップさせるのです。
また、オフィスで仕事をすると様々な雑用で席を立つ機会が多いですし、同僚とランチを共にしたり雑談をする機会もありますが、在宅勤務だと完全に孤立するので塞ぎがちになります。
定期的にストレッチや簡単な運動をしたり、陽の光を浴びたりして意識的にモチベーションを維持しなければ、生産性や創造性が低下するでしょう。
定期的なWEB会議がなくても寝巻で仕事をせず、キチンとした服装に着替える事で仕事スイッチがはいるものです。
つまり完全な在宅勤務を成功させるには、いかに自宅に出社している時と同じ環境やマインドを再現するか、というのが重要になります。
また営業職が在宅勤務となった場合は出社しないモバイルワーク的な働き方となります。
自宅で顧客の電話対応や見積作成などの事務処理をしたり、必要に応じて客先に直行直帰したりと、出社しないだけで普段とあまり変わらない生活になるでしょう。
始業時間になっても寝ていたら顧客の電話を受け損ねてしまいますし、いいかげんな就業スタイルは営業成績にも反映されます。
営業職の場合、データ入力などの事務処理を中心にした業務よりも、顧客からの問い合わせや営業活動という能動的な活動が必要とされる分、違和感が少ないと思われます。
アベってる社員(懐かしい表現ですが、、、)
在宅勤務を成功させるため、マネジメント側とテレワーカー側の両者の視点を紹介しましたが、どちらにも当てはまらない社員がいます。
それは在宅勤務になり、暇な状態が可視化されてしまった社員です。
このような社員はコンサルタント業界のスラングで「アベってる」社員と呼ばれます。これは待機中を意味するavailableをもじったものです。
従来は勤務時間中その場にいれば何となく誰もが仕事をしたように見えていました。多くのマネージャーにとって、管理とは社員が目の届くところにいる事だったからです。
しかしテレワークには、あからさまに社員の仕事量やスケジュールが可視化される特徴があります。
そのため沢山の業務をこなして忙しい社員とそうでない社員が明確に分かれてしまうのです。
つまり在宅勤務で労働裁量性が採用されたからと言って、その仕事量が思ったより少ない場合、処理すべき仕事のない暇な社員だと思われるリスクがあります。
怖い話ですがアベってる社員は将来のリストラ候補になるかもしれません。
もし在宅勤務になった時、処理すべき仕事が少なくて楽になったと感じるのなら、積極的に新たな仕事を獲得して、組織の中で自分の有用性を発揮していきましょう。
経済状況が厳しい中、暇をしていると思われて得をする事はないのです。
まとめ
ここまで在宅ワークの業務内容や管理方法について紹介してきた内容はあくまでも一例にすぎません。自社のおかれた状況によって最適なマネジメントは異なります。
しかしテレワークによる在宅勤務を導入するのなら、助成金の関係上、出来るだけ早い方が良いでしょう。
(第70報)事業継続緊急対策(テレワーク)助成金募集を開始します!|東京都防災ホームぺージ
上記公式発表の通り、上限250万円という大規模な助成金が組まれています。令和2年5月12日が期限なのであまり時間はありません。
また、東京都以外の事業者の場合は厚生労働省の助成金を申請しましょう。支給対象となる取り組みは東京都のものとほぼ同一で、交付申請の受付は令和2年12月1日となっています。
どちらも申請の際は決められた様式に従う必要がありますが、慣れていないと手続きに戸惑う事もあるでしょう。
特に厚生労働省の助成金申請のマニュアルは35ページもあるので、必要な書類を揃えるどころか読み解くのも大変です。
しかしテレワーク用ツールのベンダーに相談すれば、適切なツールの相談や助成金申請を手伝ってくれます。
まずは気軽に資料請求や相談をもちこんでみてはいかがでしょうか。