不動産

不動産と看護の連携で暮らしを守る 地域密着の老舗が目指す「おせっかいな、まちづくり」

沖縄県那覇市の小禄(おろく)エリアに特化し、地域密着で40年以上の歴史を歩む高蔵住宅。
管理戸数2,000戸超の不動産管理に加え、訪問看護事業も展開する同社では、1日に100件を超える膨大な入電がありがあり、スタッフが一日中電話対応に掛かりきりになってしまう現場の負担が課題となっていました。
同社は特有の地域性による顧客特定の手間や、ベテラン社員の「経験知」の属人化を解消し、誰もが同じ安心感でお客様に寄り添える環境を整えるため、「カイクラ」を導入しました。
今回は導入の経緯や現場の変化について、代表取締役 高良 友美 氏にお話を伺いました。

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  1. ポップアップで相手を特定し、一日中電話に追われる現場の負担を解消
  2. 録音とテキスト化で経緯を可視化、担当者不在時も全員で共有可能に
  3. 不動産と看護の連携により、録音データから入居者様の異変を察知
  4. 電話の負担軽減で生まれたゆとりを「おせっかいな、まちづくり」へ

顧客特定と引き継ぎの課題解決に向けてカイクラを導入

――はじめに、カイクラの導入を検討された背景には、どのような課題がありましたか?

当社は那覇市の小禄(おろく)エリアで40年以上、地域密着の歴史を歩んできました。大きな転機となったのは2018年、創業者である父の急逝です。当時、香川県にある病院で看護師をしていた私は、急遽沖縄へ戻り、代表を引き継ぐことになりました。

現場に入ってまず驚いたのは、事務所に鳴り響く電話の圧倒的な多さでした。1日に100件を超えることもあり、スタッフ全員がほぼ一日中、ひっきりなしに掛かってくる電話の対応に掛かりきりになっている状態だったのです。先代が何より大切にしてきた「地域密着でお客様とのつながりを重んじる姿勢」を守るためにも、お電話には丁寧に向き合いたい。しかし、常に電話対応に追われ、他の業務を止めて受話器を取り続けなければならない状況は、現場のスタッフ全員にとって心身ともに非常に大きな負担となっていました。

――顧客対応において、具体的にはどのような状況が現場のボトルネックになっていたのでしょうか?

小禄地域には「上原」「高良」「照屋」といった同じ苗字の方が非常に多いという、特有の地域性があります。そのため、お電話口で苗字だけを名乗られても、どこの物件のどなたなのかを瞬時に特定することが極めて困難でした。

さらに、長年当社を信頼して管理を任せてくださっているオーナー様ほど、家族のような感覚であえて名乗らずにフランクに話し始められるという、地場ならではの温かい文化もありました。関係性が深いからこそ「失礼ですが、どなたですか?」と聞き返すことはスタッフの立場からすると大変心苦しく、結果として会話を合わせながら頭の中で必死にお客様を特定していく手探りの対応にならざるを得ませんでした。このやり取りがさらに電話業務を逼迫させ、特に新人スタッフにとって大きなハードルになっていたのです。

また、当社には20年・30年のベテラン社員がおり、お声だけでどなたからの電話かを特定できるのですが、その貴重な経験知を新人にその場ですぐ共有する仕組みはありませんでした。先代の温かい想いを大切に守りながらベテランの歴史を会社全体の財産にし、誰が電話を取っても同じ安心感で寄り添える環境を整えるために、2020年にカイクラの導入を決めました。

老舗不動産の風土を乗り越え、時間をかけて社内へ浸透

――サービス導入に向けて、社内ではどのような反応がありましたか?

正直にお話しすると、導入当初は戸惑いや疑問の声が上がったのが実情でした。

当社は地域密着の老舗不動産会社であり、長年の経験や体で覚えた職人肌のスタイルを大切にする風土があります。

現場を支えてきたスタッフにしてみれば、慣れ親しんだフローを変えることへの心理的な抵抗感があるのは、ごく自然なことだったと思います。

そのため、日々の業務に追われる現場に迷いや余計な負担をかけないよう、まずは私自身が先頭に立って導入を進め、「これがあればみんなの電話対応が絶対に楽になる」という一心でスタートを切りました。

導入してからも、定着までは地道な苦労の連続でした。膨大な顧客データをシステムに移行する作業や、全社員のパソコンへの初期設定だけでも多大な労力を要しました。みんなが「これ実は便利かもしれない」と心の底から実感し始めるまでには、導入から2〜3年という月日がかかりました。

――浸透するまでに時間はかかったとのことですが、それがどのようにして変わっていったのでしょうか?

日々の業務のなかで使い続けるうちに、少しずつ「受話器を取る前の安心感」を全員が肌で感じるようになっていったからだと思います。最初は新しいシステムに身構えていたスタッフたちも、ポップアップで相手が分かってから出られる快適さや、お名前を確認する手探りの手間がなくなる便利さに、一人、また一人と気づき始めました。

今では、「カイクラがなくなったら仕事にならない、全員が不安になる」と言うほど、なくてはならない社内のインフラとして完全に定着しています。最初はシステムに懐疑的だったベテラン社員から、右も左も分からない新人まで、今では全員がカイクラを前提としてお電話に向き合っています。当社の歩幅に合わせて地道に浸透させていったことが、結果として「手放せない安心感」へと繋がりました。

通話録音とテキスト化が防ぐ言葉のすれ違い、管理・共有の質を高める基盤に

――お電話が終わった後の、情報の記録や共有の負担についてはどのような変化がありましたか?

以前は、退去に伴う修繕の報告やご相談、騒音問題など、様々なお電話をいただく際、膨大な情報を漏らさずに手書きでメモを取るだけで必死でした。お客様がお困りの状況では、必要な要点を聞き逃さないように受話器を握る現場の手には、常に大きなプレッシャーがかかっていたのです。その後のメモの整理や、他のスタッフへの引き継ぎにも多大な労力を要していました。

導入後は、すべての通話が自動で録音されるようになり、現場の安心感が大きく高まりました。さらに、話した内容がテキストとしても残るため、ちょっとしたメモ代わりにパッと文字で会話を振り返ることもでき、1日に何件もお電話が重なる忙しい時間帯でも、引き継ぎや確認の負担が軽減されています。

――顧客対応の質や、社内でのナレッジ共有という面ではいかがでしょうか?

私たちの仕事はお電話の事実確認だけでなく、言葉の「ニュアンス」を正確に掴むことが何より重要です。カイクラで通話内容を聞き返したりテキストを確認したりできるようになったことで、手書きのメモだけでは伝わりきらないリアルな経過まで正確に共有できるようになりました。

これにより、お客様との間で言葉のすれ違いや認識のズレが起きた際にも、当時のやり取りを正確に遡ることができます。現場でも、管理者が部下の電話内容を一緒に聞き直して、細やかなフィードバックやフォローを行うために本当によく役立っています。

特に、20年・30年のベテラン社員の頭の中にだけ詰まっていた、長年のお客様とのやり取りの経過を、浅いキャリアのスタッフや新人に自然な形で引き継ぐための強力なツールになっています。お電話口の細かなニュアンスを逃さない正確なデータ共有は、現場の負担を減らしながら、チーム全体の対応クオリティを高い次元で維持するための大切な基盤となっています。

声の異変を察知して看護へ連携、録音データを活かした見守り

――カイクラに蓄積された通話データは、現場でどのように活かされているのでしょうか。

当社ならではの大きな特徴として、不動産部門に加えて「保健看護部門(訪問看護)」を併設している点が挙げられます。実はある時、入居者様からいただいたお電話のなかで、言葉の詰まりやろれつの回りにくさなど、会話の様子にスタッフが違和感を覚えることがありました。

そこで、カイクラに残された録音データを社内の看護師に確認してもらったところ、「以前の話し方と比べても、やはり体調や認知機能に異変が起きている可能性が高い」というプロの視点での判断に至ったのです。すぐに看護師がその入居者様のもとへ訪問し、早期の介入や適切なケアへと繋げることができました。不動産管理という生活に密接した仕事だからこそ、お電話口の些細な変化から暮らしの異変に気づき、看護の力で直接手を差し伸べられる。これは通話録音という客観的なデータが残っていたからこそ形にできた、当社ならではの利活用だと実感しています。

現場の安心が確かな信頼へ カイクラと共に築く「理想の顧客対応」の形

カイクラを導入した当初の目的は、誰からお電話が掛かってきたのかが事前に分かるようにすることや、一日中電話に掛かりきりになりがちだった現場の負担を減らすことでした。

しかしスタッフ全員で運用を続けるなかで、担当者が不在であっても、お客様とのこれまでの歩みや詳細な経過をいつでも全員で正確に確認できる環境そのものが、現場の大きな安心感と確かな信頼へと繋がっています。

カイクラを導入して電話業務の負担を軽減させたかったのも、現場を支えるスタッフに時間と心のゆとりを持って働いてもらうためでした。

急逝した創業者である父がずっと地道に実践してきた「地域密着でお客様とのつながりを重んじる姿勢」は、今も在籍しているスタッフへそのまま引き継がれており、これからの私たちが目指す姿として、「おせっかいな、まちづくり」という経営理念を掲げています。

事務業務をシステムに任せることで、私たちは人間にしかできない温かい対話や、生命のケアにチーム一丸となって100%集中することができます。スタッフに引き継がれたその熱い思いを大切に守りながら、この「おせっかいな、まちづくり」を、これからも全員の手で体現し続けていきたいと思っています。