カスハラ被害で警察に通報できる?判断基準と対応策を解説

悪質な暴言や脅し、長時間の拘束や店外でのつきまといは、正当なクレームの範囲を超えた「カスハラ(カスタマーハラスメント)」です。従業員の心身を守り、安全な職場環境を維持するためには、毅然とした対応が求められます。

しかし、実際に被害に遭った際に「このケースは警察に相談していいのだろうか」と、通報をためらってしまう方も多いのではないでしょうか。

本記事では、カスハラ被害で警察に通報すべき具体的な判断基準とタイミング、通報・相談の正しい手順を詳しく解説します。また、通報後に警察がどのような対応をしてくれるのか、その範囲と限界も紹介します。

警察への通報と並行して、社内でのカスハラ対策を進めることも重要です。カイクラでは、カスハラ対策の基本をまとめたお役立ち資料を無料で配布しています。ぜひ、従業員を守る体制づくりの第一歩としてご活用ください。

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目次

カスハラは警察に通報するべき?判断基準とタイミング

「このクレームは度を越しているけれど、警察を呼ぶべきだろうか…」
顧客対応の現場で、このような判断に迫られ、頭を悩ませた経験はありませんか?

カスハラへの対応で最も重要なのは、従業員の安全と心身の健康を守ることです。そのためには、警察に通報すべきかどうかの「判断基準」と「タイミング」を正しく理解しておく必要があります。

ここでは、以下の3つに分けて判断基準とタイミングを解説します。

  1. 警察が介入できる行為
  2. 迷わず110番すべき状況
  3. 通報を検討しつつ、まずは社内で対応すべき状況

それぞれ詳しくみていきましょう。

【大原則】警察が介入できるのは「犯罪行為」

結論として、警察がカスハラに対して介入できるのは、その行為が「犯罪」に該当する場合に限られます。

なぜなら、警察には「民事不介入の原則」があるからです。これは、個人間や企業間のトラブル(民事事件)には、原則として警察は介入しないルールです。そのため、単なる不満の表明や道徳的に問題のある言動だけでは、警察は動けません。

では、どのような行為が犯罪とみなされるのでしょうか。カスハラで該当しうる主な犯罪行為には、以下があります。

脅迫罪 「殴るぞ」「家に火をつけるぞ」など、相手やその親族の生命、身体、財産に対して害を加えることを伝え、怖がらせる行為
強要罪 脅迫や暴行によって、相手に義務のないことを無理やりおこなわせたり、権利の行使を妨害したりする行為
恐喝罪 脅迫や暴行によって金品などを要求する行為
威力業務妨害罪 大声を出す、机を叩くなどの威圧的な行為で、お店の業務を妨害する行為
暴行罪・傷害罪 胸ぐらを掴む、物を投げつけるなど、身体に危害を加える、またはその危険がある行為
名誉毀損罪 公の場で具体的な事実を挙げて、社会的評価を下げるような発言をする行為

顧客の言動がこれらの犯罪に当てはまるかどうかが、警察に通報するか否かを判断する大きな基準となります。

迷わず110番すべき状況

従業員や他の顧客の身体、財産に危険が及んでいる、またはその恐れがある緊急性の高い状況では、ためらわずに110番通報してください。

社内での相談や承認を待っている間に、事態が悪化し、取り返しのつかない被害につながる可能性があるからです。現場の安全確保を最優先に行動しましょう。

具体的には、以下の状況が挙げられます。

  • 身体や物に危害が加えられている(暴行・器物損壊)
  • 明確な脅迫を受けている(「殺すぞ」「家に火をつける」など)
  • 退去を求めても居座り続けている(不退去罪)

これらの状況に陥った際に、現場の従業員が一人で判断に悩むことがないよう、緊急時の通報基準をマニュアル化し、社内で共有しておくことが大切です。

また、電話やオンラインでのカスハラの場合は、冷静に、かつ速やかに通話を切断し、録音などの証拠を確保したうえで警察に通報・相談するのが適切な手順です。

通報を検討しつつ、まずは社内で対応すべき状況

身体的な危険は差し迫っていないものの、長時間にわたる拘束や執拗な罵倒などで業務に支障が出ている場合は、すぐに110番するのではなく、まずは社内で連携して対応を検討するのが賢明です。

現場担当者の一時的な判断で通報すると、かえって話がこじれてしまったり、企業としての一貫した対応が取れなくなったりするリスクがあるからです。

このような状況では、以下2つの行動で対応しましょう。

  1. 顧客に警告する
  2. 上長へ報告し判断を仰ぐ

まずは冷静に、「これ以上、業務を妨害されるようでしたら、警察に通報させていただきます」と、毅然とした態度で警告します。これにより、相手が冷静さを取り戻すケースもあります。

現場での対応を続けながら、速やかに上長や責任者に状況を報告し、通報すべきかどうかの判断を仰ぎましょう。このとき、顧客の言動や要求、経過時間を具体的に伝えることが重要です。

現場の従業員が冷静に状況を判断できるよう、「大声を出し始めてから15分経過したか」「要求内容が社会通念を逸脱しているか」などの項目をまとめたチェックリストを用意しておくと、スムーズな報告と判断につながります。

たとえ、すぐの通報が必要ないと判断した場合でも、必ず対応記録を残し、上長へ報告することを徹底してください。記録を積み重ねることが、悪質なクレーマーへの対策や、将来的な警察への相談においても重要な証拠となります。

カスハラで警察が対応できること・できないこと

いざ勇気を出して警察に通報したとき、「具体的に、どこまで対応してくれるのだろう?」と不安に思う方もいるのではないでしょうか。警察の対応範囲を正しく知っておくことは、過度な期待による失望を防ぎ、次に取るべき行動を冷静に判断するために重要です。

ここでは、以下の3つに分けて警察が対応できることとできないことを解説します。

  1. 警察が現場でしてくれること(初期対応)
  2. 警察が後日してくれること(捜査・事件化)
  3. 警察が対応できないこと(民事不介入の原則)

とくに警察が対応できないことが何なのか知っておくと役立ちます。それぞれ詳しくみていきましょう。

警察が現場でしてくれること(初期対応)

110番通報を受けて現場に到着した警察官は、まず「その場の安全確保」と「事態の沈静化」を最優先に行動します。

興奮状態にある当事者同士をそのままにしておくと、さらなるトラブルに発展しかねないからです。現場での初期対応は、主に以下の流れで進められます。

  1. 状況の聴取と当事者の分離
  2. 退去要請・口頭注意・警告
  3. 今後の手続きの案内
  4. 周辺のパトロール強化

まず、双方から事情を聞き、何が起きているのかを把握します。その際、お互いを冷静にさせるため、当事者同士を物理的に引き離して個別に話を聞くのが一般的です。

相手の行為が行き過ぎていると警察が判断した場合、その場で言動を注意したり、店舗から退去するように促したりします。悪質なケースでは、警察署長名で「警告書」が出されることもあります。

この警告書に法的な拘束力や罰則はありません。とはいえ、「あなたの行為を警察が公式に問題視している」という心理的な圧力をかけ、次に同様の行為があれば逮捕も辞さないという最終通告としての効果があります。

カスハラの現場が落ち着いた後は、今後の手続きや再発防止に向けた案内があることが多いです。

被害届の提出や刑事告訴を希望する場合には、その後の手続きや生活安全課や刑事課などの相談窓口となる担当部署を案内してくれます。

また、店舗側の要望や状況の悪質性に応じて、店舗周辺のパトロールを強化・巡回ルートに加えるなど、再発防止に向けた協力をしてくれることもあります。

警察が後日してくれること(捜査・事件化)

現場での対応後、被害届の提出などを経て、警察は正式な「捜査」や「事件化」に向けた手続きを進めるべきか検討します。

もちろん、被害の相談をしたからといって、すべての事案がすぐに事件として扱われるわけではありません。犯罪として立件するためには、法的な要件を満たし、それを裏付ける客観的な証拠が必要になるからです。

後日の対応としては、主に以下がおこなわれます。

  • 改めての事情聴取と相手方への警告
  • 被害届の受理と捜査着手の判断

たとえ被害届の受理や事件化に至らなかったとしても、警察が介入し、相手に警告をしてくれた事実だけでも、カスハラ行為の再発を抑止する大きな効果が期待できます。

警察が対応できないこと(民事不介入の原則)

最も注意すべき点は、警察はあくまで犯罪行為を取り締まる機関であり、「民事上のトラブル」には介入できないことです。

これは「民事不介入の原則」と呼ばれ、警察の活動の大きな前提となっています。そのため、たとえば以下の要求への対応は、警察の管轄外となります。

  • 商品の返金や交換、契約の解消
  • 慰謝料の請求
  • クレーム内容の妥当性の判断や、企業への謝罪要求

よく「警察を呼んだのに逮捕してくれなかった」という趣旨の声を聞きますが、これも民事不介入の原則や、逮捕の厳格な要件が関係しています。

「通報=逮捕」ではありません。逮捕には、罪を犯したことが明らかで、かつ逃亡や証拠隠滅の恐れがあるなど、法律で定められた厳しい条件を満たす必要があります。

もし「警察が動いてくれない」と感じた場合、それは要求内容が民事上のトラブルと判断されている可能性があります。その場合は、警察に刑事事件としての対応を求め続けるのではなく、弁護士に相談して民事的な解決(慰謝料請求など)を目指すなど、別のルートを検討しましょう。

警察にできること・できないことの境界線を正しく理解し、目的に応じて適切な相談先を選ぶことが、問題解決への近道です。

カスハラを警察へ通報・相談する方法

実際にカスハラ被害に遭い、警察への連絡を決意したとき、「何から始めればいいのか」「何を伝えればいいのか」と戸惑ってしまいませんか?

いざというときに慌てず、警察に迅速かつ的確に対応してもらうためには、正しい手順を知っておくことが大切です。

ここでは、警察へ通報する際の具体的な方法を、3つのステップに沿って解説します。

  1. 110番通報と生活安全課(相談)を使い分ける
  2. 通報に必要な情報と証拠を準備する
  3. 捜査を依頼する(被害届や告訴状の提出)

慌てずにステップに従い、準備することが大切です。

1.110番通報と生活安全課(相談)を使い分ける

重要なのは、状況の緊急性に応じて「110番通報」と、警察署の「生活安全課などへの相談」と2つの窓口を正しく使い分けることです。

なぜなら、この2つは目的が明確に異なるためです。「110番」は「今そこにある危険」に警察官を急行させるための緊急ダイヤルであり、「生活安全課などへの相談」は「継続的な被害や今後の対策」を話し合うための窓口となっています。

目の前で暴力行為がおこなわれている、退去を求めても居座り続ける、明確な脅迫を受けているなど、従業員や顧客に危険が迫っている場合は、迷わず110番に通報してください。

すぐに身の危険はないものの、何度も嫌がらせの電話がある、SNSでの誹謗中傷が続いているなどの継続的な被害は、警察相談専用電話「#9110」に電話するか、管轄の警察署の生活安全課に直接出向いて相談するのが適切です。

110番通報の際は、落ち着いて以下の5つのポイントを簡潔に伝えましょう。

場所 事件が起きている住所、店名、目印など
状況 「お客様が暴れています」「刃物を持っています」など、何が起きているか
相手の特徴 性別、年齢、服装、人数など
危険度 けが人はいるか、武器を持っているか
証拠の有無 「防犯カメラに映っています」「会話を録音しています」など

店舗の固定電話からかけると場所の特定がスムーズですが、身の危険がある場合はためらわず携帯電話で安全な場所から通報しましょう。その際、警察から状況確認の電話が折り返しある場合に備えておきましょう。

2.通報に必要な情報と証拠を準備する

警察に状況を正確に理解してもらい、適切に対応してもらうためには、事前に「客観的な情報」と「証拠」を整理しておくことが大切です。口頭での説明だけでは「言った言わない」の水掛け論になりやすく、警察も介入が難しくなってしまうからです。

客観的な事実を積み重ねることが、警察を動かすための鍵となります。

たとえば、以下の証拠は、警察が事実を認定するうえで有効です。

  • 相手の言動の記録(録音・録画データ)
  • ナンバーディスプレイの受電履歴、メールやSNSのスクリーンショット
  • 防犯カメラの映像
  • 退去要求や警告をおこなった事実とその反応の記録

証拠を残す際は、「いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How)」の5W1Hに加え、カスハラによる「具体的な被害や影響」を記録しましょう。

「レジを占拠され、2時間にわたり業務が停止した」「従業員が精神的ショックで翌日から出社できなくなった」など具体的に伝えることで、被害の状況が明確に伝わります。

これらの情報と証拠を時系列に沿ってまとめておくことで、相談や被害届の提出がスムーズに進みます。

3.捜査を依頼する(被害届や告訴状の提出)

警察への相談後、正式な捜査や相手方の処罰を求める場合には、「被害届」や「告訴状」を提出するなど、より踏み込んだ手続きが必要になります。これらは単なる相談とは異なり、被害者が捜査や処罰を望んでいることを公式に表明する重要な書類です。

  • 被害届:「このような犯罪被害に遭いました」と事実を申告し、警察に捜査を開始するよう促すための書類
  • 告訴状:「犯人を処罰してください」の意思を示すための書類

名誉毀損罪など、被害者からの告訴がなければ起訴できない「親告罪」の場合は、告訴状の提出が必須です。

これらの書類を提出する際は、事前に準備した被害状況の記録、証拠、関係者リスト、備品が壊された場合はその損害額などをまとめた資料を持参すると、手続きが円滑に進みます。

また、法人として被害届や告訴状を提出する場合は、社内での正式な承認手続きが必要です。代表者名で提出するのが一般的なため、担当者が手続きをおこなう際には代表者からの「委任状」を求められることもあります。事前に社内の承認フローを確認しておきましょう。

カスハラで警察に動いてもらうための証拠の集め方

警察に相談したものの、「客観的な証拠がないと、我々もなかなか動けなくて…」と言われてしまい、悔しい思いをした経験はありませんか?

警察がカスハラを事件として扱うためには、被害者の訴えだけではなく、その被害を裏付ける「客観的な証拠」が何よりも重要です。

そこで本章では、警察が「これなら動ける」と判断してくれるような、説得力のある証拠の具体的な集め方を3つのポイントに絞って解説します。

  1. 録音・録画・通話記録・チャットやメールなどの証拠
  2. 時系列に沿ったメモ・第三者証言・業務影響の記録
  3. 店舗や電話対応で使えるテンプレート

いざというときに備え、日頃から証拠を記録する体制を整えておきましょう。

1.録音・録画・通話記録・チャットやメールなどの証拠

カスハラの証拠として最も強力なのは、相手の言動をそのまま記録した「客観的なデータ」です。なぜなら、人の記憶やメモは主観が入る恐れがありますが、録音や録画などのデータは決定的な証拠となるためです。

いざというときに慌てないよう、普段から記録の準備をしておくようにしましょう。

たとえば、電話対応では、通話の自動録音機能を導入すれば、証拠を漏らさずに残せます。対面対応の場合には、すぐに録音できるようボイスレコーダーを常備する、店内に防犯カメラを設置するなどの方法が有効です。

また、オンライン上のやり取りも保管しておきましょう。メールやチャットでの暴言、SNS上での誹謗中傷なども重要な証拠です。その際は、投稿内容のスクリーンショットだけではなく、投稿のURLや投稿日時も必ず一緒に記録しておくと証拠として活用しやすくなります。

集めた証拠の信頼性を保つため、録音や録画の元データ(原本)は編集・加工せず、アクセス権限を管理するなど、改ざんを疑われないような工夫も大切です。

日頃からデータを記録する仕組みを社内に構築しておくことが、従業員と会社を守るための第一歩となります。

2.時系列に沿ったメモ・第三者証言・業務影響の記録

録音や録画データに加えて、それだけでは伝わらない状況の全体像や被害の深刻さを示す「補足的な記録」も、証拠の価値を大きく高めます。

これらの記録は、相手の行為の執拗さや悪質性、そして会社が受けた実害を客観的に証明する重要な材料となるからです。

  • 時系列に沿ったメモを作成する
  • 第三者の証言を確保する
  • 業務への影響をデータ化する

他の従業員はもちろん、近くにいた顧客や警備員など当事者以外の客観的な証言も有効な証拠となります。可能であれば、後から話を聞けるように連絡先などを確認しておきましょう。

3.店舗や電話対応で使えるテンプレート

担当者による記録の質に差が出ないように、あらかじめ「専用の報告テンプレート」を社内で用意しておくのが効果的です。

具体的には、「1.発生状況 → 2.こちらの対応 → 3.相手の反応・結果 → 4.今後の対応判断」 の構成にすると、事実関係を論理的に整理できます。さらに、「身体的な危険を感じたか」「脅迫的な言動はあったか」「大声で業務を妨害されたか」などの項目をチェックボックス形式で設けることで、現場担当者が状況を客観視し、通報の要否を判断する助けになります。

このようにテンプレートを導入・運用することで、担当者がパニック状態でも記録すべきことがわかるため、証拠として使える記録を残しやすいです。そして、組織としてのカスハラ対応能力が向上し、警察との連携がよりスムーズになります。

カスハラを警察に相談する前の社内での行動

大前提として、従業員や顧客の身体に危険が及んでいる、あるいはその恐れがある緊急性の高い状況では、ためらわずに警察への通報が最優先です。

しかし、事態がそこまで深刻化する前に、社内でできること・すべきことは多くあります。ここでは、警察に相談する前段階で実践すべき、具体的な3つの社内アクションを解説します。

  1. 二名対応・対応時間の制限・担当替えを実施する
  2. 退去要求・注意喚起をおこなう
  3. 記録・報告・承認を素早くおこなう

詳しくみていきましょう。

1.二名対応・対応時間の制限・担当替えを実施する

カスハラ対応の基本は、従業員に一人で抱え込ませない「組織的な対応」です。その第一歩として、「複数人での対応」「対応時間の上限設定」「担当者の交代」をルール化しましょう。

担当者一人だけで対応すると、精神的な負担が集中し、冷静な判断が難しくなります。組織として対応することで、従業員の心理的な安全を確保し、相手の不当な要求がエスカレートすることを防ぐ効果が期待できます。

  • 二名以上での対応を徹底する
  • 対応時間の上限を明確に伝える
  • 担当者を交代する

これらのルールを設けることによって、従業員を疲弊から守れます。

2.退去要求・注意喚起をおこなう

相手の言動が度を越してきた場合は、うやむやにせず、「これ以上の行為は許容しない」と会社の明確な意思表示として、退去要求や注意喚起をおこなうことが大切です。

これは、相手の行為をその場で止めさせるだけではなく、万が一、警察への通報やその後の法的措置に移行した場合に、こちらの対応の正当性を証明する根拠にもなります。

  • 段階的に退去を要請する
  • 事前に注意喚起を掲示する
  • 物理的な安全を確保する

言葉と行動で会社のルールを明確に示すことが、従業員と職場全体の安全を守ることにつながります。

3.記録・報告・承認を素早くおこなう

カスハラ対応で重要なのは、発生した事案を個人の問題や現場レベルの判断で終わらせず、「迅速に情報共有し、組織としての事後対応」を徹底することです。

情報を組織全体で共有することで、問題の深刻度を正確に把握し、警察への相談や弁護士への依頼など次のステップへスムーズに進めます。また、対応した従業員のケアや、今後の再発防止のためにも欠かせません。

  • 報告・承認のフローを確立する
  • 従業員のメンタルケア窓口を設ける
  • 再発防止ミーティングで次に活かす

「報連相」の徹底と、従業員へのケア、そして将来に向けた改善活動が、カスハラに対応できる組織の基盤となります。

カスハラで警察以外の相談先

カスハラへの対応は、必ずしも警察だけが選択肢ではありません。

警察が直接介入できない問題や、そもそもカスハラに強い組織づくりを進めたい場合には、他の専門家や機関の力を借りることが有効です。

ここでは、以下の2つの相談先を紹介します。

  1. 弁護士・社労士による警告書
  2. 行政・業界団体の相談窓口

それぞれ警察が対応しきれない領域をカバーしてくれる相談先です。

1.弁護士・社労士による警告書

なぜなら、弁護士は法律に基づき、会社の代理人として相手方と直接交渉したり、裁判などの法的な手続きを進められる専門家だからです。感情的な対立に陥ることなく、問題を法的に解決へと導いてくれます。

弁護士に依頼することで、以下の具体的なアクションを取ることが可能になります。

  • 内容証明郵便による警告書の送付
  • 従業員への接触禁止の要求
  • 損害賠償請求

また、弁護士や社労士は、社外への対応だけではなく、社内体制を強化するうえでも頼れるパートナーです。企業には従業員の心身の安全を守る「就業環境配慮義務」があり、その観点から、どのような社内措置を講じるべきか専門的な助言をもらえます。

2.行政・業界団体の相談窓口

具体的なカスハラ対策の進め方や、社内ルールの作り方に悩んだ際には、厚生労働省などの「行政機関」や、自社が所属する「業界団体」が提供している情報を活用することが有効です。

これらの機関は、国が示す対策の指針や、業界の特性に応じた具体的なノウハウ、さらには企業の取り組みを支援するための助成金など、有益な情報を提供しています。

これらの公的な窓口は無料で相談できるケースが多く、コストを抑えながら効果的なカスハラ対策を推進するための助けとなります。

カスハラを通報する警察との事前連携と体制づくり

これまで、カスハラ発生時の判断基準や対応方法を解説してきました。しかし、「いざというときに、本当にマニュアル通りに動けるだろうか」「未然に防ぐことはできないのか」と不安を感じる方もいるのではないでしょうか。

そこで、カスハラが発生した際に警察とスムーズに連携するための「事前準備」と「組織的な体制づくり」を解説します。

  1. 所轄との連絡ルート整備と緊急時カード
  2. 通報判断基準の社内周知・訓練
  3. 地域特性や営業時間に応じた警備計画

事が起きてから慌てるのではなく、起きる前からの備えが、従業員と企業を守るために大切です。

1.所轄との連絡ルート整備と緊急時カード

いざというときに警察と迅速に連携するためには、問題が発生する前から所轄の警察署や交番と具体的な連絡ルートを整備しておくことが大切です。

平時からコミュニケーションを取っておくことで、警察側に自社の営業実態や周辺環境を理解してもらいやすくなり、緊急時の通報がスムーズになります。また、日頃の巡回を強化してもらうなど、防犯意識の向上にもつながります。

まず、パニック状態でも正確な情報が伝えられるよう、所轄警察の直通電話番号や店舗住所、緊急時の合言葉などを記載した「緊急時カード」をレジ横などに常備しましょう。

さらに、地域の防犯会議への参加や責任者による挨拶などを通じて日頃から警察と接点を持っておけば、「深夜帯の巡回を強化してほしい」と要望も伝えやすくなります。

とくに、年末年始のセールなどの繁忙期には、事前に警察へ情報共有し警備体制を相談しておくと、トラブルを未然に防ぐ体制を強化できます。

2.通報判断基準の社内周知・訓練

警察との連携体制を整えても、社内で「通報すべきか否か」の判断基準が共有されていなければ、いざというときに従業員は動けません。そのため、全従業員が同じ基準で行動できるよう、基準の周知徹底と実践的な訓練をおこないましょう。

従業員が「自分の判断で通報して、もし間違っていたらどうしよう…」と躊躇する事態を防ぎ、誰が対応しても、いつ発生しても、組織として一貫した行動が取れるようにするためです。

3.地域特性や営業時間に応じた警備計画

警察との連携や社内訓練と並行して、自店舗の「物理的な弱点」を洗い出し、地域や営業時間の特性に応じた具体的な警備・防犯計画を立てることも、従業員の安全を確保するうえで大切な取り組みです。

カスハラの発生リスクは、都心か郊外か、深夜営業の有無、従業員の人数などによって大きく異なります。自社の状況に合わせたきめ細やかな計画が、実際の被害を防ぐことにつながります。

まとめ:警察との事前連携でカスハラ被害を防ごう

本記事では、カスハラ被害に遭った際の警察への通報基準や手順、そして警察が対応できること・できないことの範囲を解説しました。

どのような言動が警察への通報対象となるのか、その判断基準を社内で明確化し、全従業員に周知徹底しておきましょう。担当者一人ひとりが自信を持って、組織として一貫した行動を取れるようになります。

「自社で何から手をつければいいかわからない」「カスハラ対策の基本を改めて確認したい」。カイクラでは、このようなお悩みを持つ方のために、カスハラ対策のポイントをまとめたお役立ち資料を用意しています。

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この記事を書いた人

カイクラ編集部です。カイクラ.magは、株式会社シンカが運営するオウンドメディアです。 「音声を記録し、会話を企業価値に」をモットーに、「会話」に関する様々なテクノロジーや最新情報、企業の業務効率化や社内コミュニケーションの活性化事例など、すべての企業にとってお役に立てる情報を幅広く発信します。

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